国際・政治東奔政走

「キングメーカー」に疑問符 党総裁選は安倍氏にも試練

菅義偉氏を選出した昨年の自民党総裁選。壇上に並んだ(左から)岸田文雄氏、安倍晋三氏、菅氏、石破茂氏(東京都内のホテルで2020年9月14日)
菅義偉氏を選出した昨年の自民党総裁選。壇上に並んだ(左から)岸田文雄氏、安倍晋三氏、菅氏、石破茂氏(東京都内のホテルで2020年9月14日)

「キングメーカー」に疑問符 党総裁選は安倍氏にも試練=伊藤智永

 来たるべき自民党総裁選(9月17日告示・29日投開票)は、菅義偉首相続投の是非を巡る争いであると同時に、「キングメーカー」を目指し始動していた安倍晋三前首相が、果たして退任後も本物の政界最有力者たり得るか、今後への真価が問われる機会でもある。だが、事実上始まった総裁選序盤の混乱で、その政治力に疑問符が付いた。無派閥の高市早苗前総務相、最大派閥・細田派幹部の下村博文政調会長が、立候補への意欲を繰り返したからだ。

意欲示した下村氏断念

 二人とも安倍氏と非常に近く、当初は「無投票に持ち込みたかった総裁選実施が避けられないとみた安倍氏が思惑含みで背後にいるのでは」(若手議員)との臆測すらあったが、そろって安倍氏との連携をあっけらかんと否定。下村氏は菅氏に進退を迫られて断念し、高市氏も推薦人の議員20人を集められるか不透明だが、少なくとも安倍氏はあらかじめ2人の野心を抑えることができなかった。

 高市氏は昨年末から安倍氏に再々登板を促したが、最終的に7月下旬にはっきり断られ、「ほんなやったら、私、出たるわ」とタンカを切ったという。訴える政策は、「ニュー・アベノミクス」、憲法改正、中国脅威を見据えた危機管理投資・安全保障政策など。安倍氏がやり残した右寄り政策を、もはややる気のない本人に代わってさらに前進させ、菅政権に飽き足らない右派支持層にアピールする主張だ。安倍氏を持ち上げつつ「過去の人」扱いするニュアンスを聞き流すことは難しい。

 安倍氏はかつて「ポスト安倍」候補の一人として稲田朋美元防衛相を引き上げたが、稲田氏が選択的夫婦別姓問題に取り組み始めるや、安倍氏の取り巻きらが稲田氏を攻撃しだし、党内論議も高市氏を代表とする保守系議員集団に押し戻された。「借りのある高市氏にモノが言えないのか」(同前)と勘繰られても仕方がない。

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