自分の車の後部座席で得た感覚 嘆きと苦痛からの緩やかな恢復=芝山幹郎(映画)
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映画 ドライブ・マイ・カー 自分の車の後部座席で得た感覚 嘆きと苦痛からの緩やかな恢復=芝山幹郎
他人が運転する自分の車に乗るのは妙な感じだ。旅先でレンタカーを仲間と交互に運転するのは気にならないが、自分の車の後部座席は落ち着かない。見える風景がいつもとちがうだけでなく、移動する感覚そのものがどこか異なる。
家福悠介(西島秀俊)は、広島の演劇祭に参加したとき、この感覚を味わう。家福(禍福やカフカという単語を連想させる名だ)は演出家で俳優だ。演劇祭では多国籍・多言語の俳優たちと〈ワーニャ伯父さん〉を上演することになっている。長く乗り慣れた赤のサーブ900を運転して、彼は広島に向かう。
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