ウォルドロンの哲学でヘイトスピーチ問題を考える=小川仁志
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ヘイトスピーチと言論の自由のバランス。萎縮せず自分の意見を言う方法は/96
Q ヘイトスピーチと言論の自由のバランス。萎縮せず自分の意見を言う方法は
A 「シティズンシップの尊厳」を優先し、判断してみては
ネット上でのヘイトスピーチにはうんざりですが、一方で、それを批判する言葉狩りのような風潮も気になります。そんな中、どうしたら萎縮することなく正しい発言ができるでしょうか。
(自営業・40代男性)
今、ヘイトスピーチは社会問題になっていますね。法律もできましたが、範囲が限定されているため、なかなかネット上の差別的表現全般を規制するまでには至っていません。
その背景にはこれが表現の自由との兼ね合いで、そう簡単に規制できるものではない事情があります。表現の自由は日本国憲法でも最も尊重されるべき人権の一つです。その意味で、何がヘイトスピーチに当たるのかは慎重にならざるを得ないわけです。
これは日本に限った話ではありません。そこで参考になるのが、ニュージーランド出身の政治哲学者ジェレミー・ウォルドロンの思想です。
国家の前提が揺らぐ時
彼は言論の自由よりも、尊厳の方が重視されるべきだと言います。
この尊厳とは、シティズンシップの尊厳を意味します。つまり、私たちは市民としての尊厳を持っており、それは市民の相互間で尊重されなければなりません。そうした相互承認が保障されて初めて、私たちは安心して社会…
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週刊エコノミスト
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