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自民党次期総裁の課題 コロナ対策を最優先にしつつ 構造改革で潜在成長率の向上を=中園敦二
自民党次期総裁の課題 コロナ対策を最優先にしつつ 構造改革で潜在成長率の向上を=中園敦二
「この非常時対応ができない理由を並べる役人を更迭して、できる方策を探る若手を登用する必要があり、事実上、次期首相がこのような政治的意思を示せるかが大きなポイント」
りそなアセットマネジメントの黒瀬浩一チーフストラテジストは、次期自民党総裁が何よりも優先して取り組む課題として、新型コロナウイルス対策を挙げる。
コロナ対策と同時に短期的な財政政策について、三井住友DSアセットマネジメントの市川雅浩チーフマーケットストラテジストは「経済を動かすという意味で赤字が拡大するのはやむを得ない」とする。ただ、中長期的には「歳入を増やすなら将来的に消費増税などを考えなければならないし、もう少し工夫した税制改革をしてもいい。歳出を減らすなら医療費や社会保障関連費に大胆なメスを入れる必要がある」とする。
日銀は出口を
野村総合研究所の木内登英エグゼクティブエコノミストは「まず、一番大事なのは計上した予算を執行すること」としたうえで、中長期的には「できるだけ早く財政健全化を目指す」と指摘する。「消費税を引き上げれば弱者も負担することになるので、法人税や所得税の増税、または東日本大震災時の復興特別税のような税制変更も重要になる」。
また、金融政策については、前出の市川氏は「緩和的な金融政策が継続されることが望ましい」とするものの、米連邦準備制度理事会(FRB)や欧州中央銀行(ECB)が2、3歩先を行き、うまくかじ取りをしていることを踏まえ、「ある程度出口戦略を示していくことが課題だ」とする。
また、BNPパリバ証券の中空麻奈チーフクレジットストラテジストは出口戦略について「インフレをみても日本だけ出遅れているので相当先だ」と話す。政府と日銀が2013年に結んだ政策合意(アコード)については「『2%のインフレ』の看板を外してギブアップとは言えないが、ある程度の微調整をしてもいいのではないか」としたうえで、「それよりは『財政再建』の旗を降ろさないほうがよほど大事だ」と語る。
一方、成長戦略について、市川氏は「成長戦略実行計画に沿ってデジタル化への集中投資などを進めればいい」という。また、木内氏はコロナ対策と同時並行で構造改革による経済の効率性や生産性、そして潜在成長率の向上に力を傾けることに期待する。具体的にはデジタル化の推進、東京一極集中の是正、中小企業や飲食などサービス業の生産性向上の3点を挙げる。
「デジタル化への投資、グリーン成長戦略、少子化の克服、経済安全保障の確保、ワクチンの開発、防災・国土強靭(きょうじん)化に加え、エネルギー政策としてカーボンニュートラルや電力安定供給のため、原発を推進するかが課題」と指摘するのは、ニッセイアセットマネジメントの吉野貴晶投資工学開発センター長だ。
日経平均株価については、東海東京調査センターの平川昇二チーフグローバルストラテジストは「これから本格的に外国人が買いに来る。年度末には3万4500円」と予想する。
(中園敦二・編集部)