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週刊エコノミスト Online 大学の地方学生争奪戦 

INTERVIEW 地方大学はどうする? 平田オリザ・芸術文化観光専門職大学学長

中根正義撮影
中根正義撮影

兵庫県公立大学法人芸術文化観光専門職大学(豊岡市)

オンリーワンの特色が必要 「大きなスキマ」はまだまだある

 今年4月に兵庫県豊岡市で開学した芸術文化観光専門職大学。その初代学長に就任した平田オリザ氏に、今後の地方大学の役割や生き残り戦略を聞いた。

(聞き手=中根正義・毎日新聞記者)

 日本は新型コロナウイルス禍以前、インバウンド(訪日外国人観光客)で非常に潤っていた。これは観光業界の行動力もあるが、特に中国や東南アジアの人たちの所得が増え、初めての海外旅行先として安い、近い、安全・安心である日本を選ぶことが多かったためだ。(大学の地方学生争奪戦 特集はこちら)

 このようなコンテンツを消費する観光を「文化観光」と表現する。本学は文化観光の中でも、特に芸術に特化した「芸術文化観光」というジャンルを学ぶことを目的に創立された。

 文化観光を学ぶことは、兵庫県豊岡市の観光課題の解決にも直結する。市内の城崎温泉は、今は非常ににぎわっているが、名物のカニ料理に頼る観光モデルは早晩崩れていくのでは、と旅館経営者も懸念している。

 城崎温泉がある豊岡市、そして豊岡を含めた3市2町からなる但馬地区が国際的なリゾート地に発展するには、スポーツやアートなど、昼から夜まで楽しめる文化的な観光資源が今後必須になる。そのため、本学は現地の観光業界から、非常に大きな期待が寄せられている。

オンリーワンの特色

 一方、人手不足と後継者難という問題がある。景気が良くても人手不足で閉店するケースも起きているので、卒業生がこの地に残ってくれることへの期待は高い。

 豊岡市は現在、人口8万人を切っており、1年間で生まれる子どもの数は約500人にまで落ち込んでいる。これまでは大学もなかったので、高校卒業生の7割以上がいったん地域の外に出てしまう状況だった。そのような状況の中で、本学の定員である80人の大学生が毎年来てくれるのは、非常に大きな意味を持つ。

 このうち何人が豊岡市に残るかは分からない。ただ、どれだけの卒業生が残ってくれるか、これが豊岡の未来を決定すると言っても過言ではない。仮に2割の学生に残ってもらえれば、市の状況は相当良くなるはずだ。

 私が「大きなスキマ」と呼んでいるように、都市部の大学が本格的に手を付けていない“スキマ産業”のジャンルは、まだ多く残されていると思っている。本学も演劇・ダンス・観光というスキマの部分で、全国各地から学生を集めることができた。

 大学を作れば学生がやってくるという時代はとうに終わった。その大学でしか学べない、オンリーワンの特色が必要だろう。地方大学が生き残るには、それが一つの道になるに違いない。昨年度の入試では、志願者倍率が7.8倍と大きな人気を集めることができた。まずはこの状況を維持し、4~6年後には学部増設や定員増につなげることも検討課題だ。

 現在はコロナ禍で非常に厳しい状況だが、私が持つネットワークを使って、海外の交換留学先の確保にも着手している。日本で就職を望む海外の若者も多くいる。そのような若者に留学生として来てもらい、こちらで卒業して就職してもらう事例も将来的には増やしていきたい。(談)


 ■人物略歴

ひらた・おりざ

 劇作家、演出家。1962年東京生まれ。86年国際基督教大学教養学部卒業。大学在学中に劇団「青年団」を旗揚げ。2021年4月より現職。大阪大学、四国学院大学、東京芸術大学などの客員教授も務める。代表作に『東京ノート』『月の岬』『上野動物園再々々襲撃』など。

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