格差解消に向け動き出した中国 不動産税を試験導入する狙いとは=神宮健
共同富裕に向け動く習政権 不動産税試行で課税強化へ=神宮健
中国が共同富裕に向けて動きだした。
共同富裕とは、鄧小平の時代から掲げられている目標で、人民大衆の物質的生活、精神的生活が裕福になることである。そして、人民全体が裕福になることであり、少数の人が裕福になることでも、一律的な平均主義でもないとされる。
習近平主席は、最近、共同富裕に関して、(貧富の格差に見られる)両極分化を防止する、社会階層の固定化を防止する、と発言している(中国共産党の理論誌『求是』の記事「着実に共同富裕を推進」=10月公表)。
「寝そべり族」に象徴される一部の若者に昨今見られる無気力感の背景にも、努力してもカネやコネの問題に阻まれ状況が改善できない社会階層の固定化があると思われる。
背景の一つには、従来の経済発展モデル、具体的には不動産を軸にした経済発展モデルの限界がある。地方政府・不動産開発業者・金融機関が一体となった土地・不動産開発を利用した錬金術に参加できた層と、できなかった層の所得格差はこの10年以上問題となっている。これまでの諸改革の効果が十分でない中、政府も社会安定維持の観点から、さらに改革を進めざるを得なくなっている。
今後目指すべき発展モデルは、不動産開発に依存しない主に個人消費を主とした発展モデルであるが、その実現には、とりもなおさず所得と富の偏在を修正し、中間所得層を拡大させなければならない。
所得・富の偏在の是正策については、不動産税や相続税の導入の必要が以前から指摘されている。この点で、最近、不動産税の導入に向けた動きが出てきたことは注目に値する。
10月に全国人民代表大会常務…
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週刊エコノミスト
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