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経済・企業 東証再編

「数字を固定する時価総額基準はセンスがない」=インタビュー:松本大マネックスグループ社長

「経過措置の継続は毎年議論を 数字固定の基準はセンスない」

 東証取締役会の諮問機関「市場運営委員会」の委員であるマネックスグループの松本大代表執行役社長CEO(最高経営責任者)に、投資家の立場から東証再編をどう見るか聞いた。

(聞き手=稲留正英/中園敦二・編集部)

── 投資家の立場から東証再編の評価は?

■東証再編は今年6月に改定されたコーポレートガバナンス・コード(企業統治の指針)の流れに沿って実行されている。これは、株主の視点を経営に持ち込むということだ。

 そのため、議論は東証の中ではなく、金融庁の審議会で進められた。発行体(企業)の視点だけでなく、投資家、将来の投資家になる人などが幅広く参加し、株主の視点で議論したことに意味がある。しかし、残念なことに、議論の最後に発行体側の視点が強く入ってきた。

── 具体的にはどのような点か。

■その最たるものが、プライム市場の「経過措置」について、終了日が決まっていないことだ。私は東証の今年5月の市場運営委員会で、経過措置については「東証だけで、あるいは東証と発行体だけで決めるのではなく、投資家代表も入っている市場委員会を毎年開き、経過措置を続けるかどうか議論しましょう」と提案した。自分としては最後にくぎを刺したつもりで、東証の山道裕己社長に「やります」と約束してもらった。

 また、驚いたことは、株式の流動性を計算する際、株主が大量保有報告書で保有目的に「純投資」と書いていれば、固定株(特定の株主が保有していて流通しにくい株)には入れないということになっている。保有目的は「複数」の記入ができるので、持ち合いが目的であっても、おまけのように「純投資」とさえ書けば、固定株の計算から外せることになる。「なんじゃこりゃ」という感じだ。

── 新たな市場区分ではプライム市場の流通株式時価総額が100億円以上に定められた。

■インフレが起きれば、お金の価値が変わっていく。経営規模が変わらない会社でも時価総額が大きくなったりする。資本市場では数字はすべて相対的な概念だ。時価総額基準を固定するのはいかがなものか。マーケットのルールに固定した数字を入れるのはセンスがない。分かりやすさのために仕方がないのなら、継続的にそうした数値を見直していくことが大切だ。

少数株主の利益守れ

── 親子上場を解消する動きも広がっています。

■気を付けなければいけないのは、「親子上場は悪い」とか「親子上場解消がいい」という話ではない。親子上場を廃止・解消する場合に問題となるのは、子会社の少数株主の利益がないがしろにされることだ。

 例えば、親会社にとっては子会社の株式を(適正な株価より)安く買えた方がいいだろうが、それでは子会社の少数株主の利益が阻害されることになる。

 仮に、米国で親会社の取締役会が子会社株を安く買い、子会社の株主の利益を害したおそれがあると、子会社の株主らから親会社の役員に対して集団訴訟を起こされる。株価が(第三者が客観的に評価する)適正価格で親子関係が解消されるかが重要で、会計監査法人などを導入してきちんとやるべきだ。


 ■人物略歴

松本大(まつもと・おおき)

 1963年埼玉県生まれ。87年東京大学法学部卒業、ソロモン・ブラザーズ・アジア証券入社。90年ゴールドマン・サックス証券。99年にマネックス(現マネックス証券)を設立し、現在会長。マネックスグループ代表執行役社長CEO。

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