「自民過半数割れ」の世論調査に感じたこれだけの違和感=平田崇浩
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外れた「自民過半数割れ」予測 「最速総選挙」与党の焦り映す=平田崇浩
今回の衆院選がかつてないほど情勢の読みにくい選挙だったことは間違いない。立憲民主党など野党5党が213選挙区で候補者を一本化した結果、全289選挙区の3分の1近くが接戦の様相を呈し、各選挙区の当落がどちらに転ぶか、最後まで予断を許さなかったからだ。とはいえ、読売・日経・NHKが投票当日まで「自民過半数割れ」の可能性を報じ続けたことには強い違和感を覚えた。
読売・日経・NHK発
「自民減 単独過半数の攻防/立民、議席上積み」の見出しが読売新聞朝刊に躍ったのは衆院選公示から2日後の10月21日。読売が日経新聞と一緒に序盤情勢調査を行ったのは公示日19日と翌20日。日経もその結果をもとに「与党、過半数を視野」と報じた。
毎日新聞も共同通信と一緒に同じ日程で序盤情勢調査を実施した。データ分析は各社が独自に行う。毎日は自民党の獲得議席を「224〜284」、立憲民主党は「88〜146」という幅を持たせた形で予測した。衆院(定数465)の過半数ラインは233。自民党が接戦区の大半で敗れれば単独過半数を割る可能性がないわけではないが、上に振れれば公示前の276議席を上回る可能性もある。「自民過半数割れ」を見出しにとるほどの自民劣勢を示すデータは見当たらず、公明党と合わせた与党の過半数獲得は確実とみて「自民議席減の公算大/与党、過半数は確保」との見出しで報じた。
読売・日経と毎日・共同とで調査方法は違えど、有権者から無作為抽出した対象者に電話でアプローチする調査の大枠は同じ。得られるデータに大きな乖離(かいり)があったとは思えない。それは日経が毎日と同様、「与党過半数」に焦点を当てたことに表れている。
その後、永田町の空気を変えたのが、NHKの情勢調査結果という触れ込みで駆け巡った「自民過半数割れ」の観測情報だった。NHKは独自の情勢調査を行っていることを公表していないが、永田町では公知の事実。序盤情勢調査のデータからは読み取れなかった野党優勢の流れが、選挙戦が進む中で急速に全国に広がっているのか。我々も疑心暗鬼に駆られた。
毎日新聞社は昨年4月、世論調査の実践研究で知られる埼玉大の松本正生名誉教授と共同出資し、新時代の調査方式の研究・開発に取り組む「社会調査研究センター」(松本社長)を設立。同センターが10月23〜2…
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週刊エコノミスト
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