林外相訪中に高いハードル 自民内で強硬派の懸念高まる=及川正也
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岸田文雄政権の対中国外交がそろりと動き出した。
「日中外相電話会談で招請を受けましたので、調整していこうと(いうことになっている)」。林芳正外相は11月21日のBS番組で、同18日に行った王毅外相との電話協議で訪中の要請を受けたことを明らかにした。外務省幹部によると、中国が入閣したばかりの日本の外相に訪中を打診するのは異例だ。
外務省によると、両外相は、来年の日中国交正常化50周年に向けて「建設的で安定的な日中関係」の構築に努力することを確認。日中経済に関し、「対話と実務協力」を進め、国交正常化50周年を契機に経済・国民交流を後押しすることで一致した。
親子2代の知中派
会話は約40分にわたり、ブリンケン米国務長官との約30分を上回る長さだった。林氏は外相就任まで日中友好議員連盟会長を務めていたこともあり、「古い友人」と呼び合い、友好関係ぶりが感じられたという。
林外相は、日中関係の改善に尽力した林義郎元蔵相の長男で、親子2代で日中議連会長を務めた「知中派」として知られる。外相就任の機会をとらえた訪中の要請は、沖縄県・尖閣諸島の領有や新疆ウイグル自治区の人権をめぐって日中関係が難しい局面にある中、その打開に向けた林氏への期待感の表れ、という見方もある。
伏線はあった。日中外交関係者によると、林氏の外相就任に先立ち、中国当局から外交ルートを通じて日中高官による協議開催の打診が事前にあったという。「中国は対話に前向きだ。年末から年明けにかけて、日中外交が活発化する可能性がある」(同関係者)との見方が出ている。
対立から対話へと潮目が変わり始めていることには、わけがある。日中外相電話協議の2日前の11月16日(米国では15日)、オンラインによる米中首脳会談が行われ、米中衝突を回避するための複数の作業部会設置で合意した。緊迫する台湾や人権問題をめぐる対立が紛争に発展しないためのリスク管理の枠組みだ。
こうした動きをにらみながら、日本政府も中国側と粘り強く接触を続けてきた。外務省関係者によると、外交ルートを通じた交渉や会談は今年、160回を超えている。尖閣周辺での中国公船の動向に深刻な懸念を示し、台湾海峡の「平和と安定」の重要性を伝える一方、「過度に緊張が高まらないようにしている」(外務省筋)という。
ただし、日中関係が直ちに改善に向かうと考えるのは早計だ。むしろ、知中派の林外…
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週刊エコノミスト
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