教養・歴史書評

差別を直視する強さ コリアン・クールを読む=ブレイディみかこ

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 英国でも、韓国の音楽や映像が「かっこいい」と言われるようになって久しい。ネットフリックスのドラマ「イカゲーム」や音楽グループのBTSなど、息子の世代のティーンの日常にもコリアン・クールは定着している。文化はさまざまなジャンルが作用し合って生成されるから、音楽や映像が面白ければ本もそうであるのは当然だ。『ペイント』(イ・ヒヨン著、小山内園子訳、イースト・プレス、1650円)も、韓国のエッジを実感させるYA(ヤングアダルト)小説だった。

「親ガチャ」という言葉があるが、この小説に登場するティーンたちは、親を選ぶことができる。少子化が極限まで進んだ近未来。人々は子どもを作らないし、作ってもちゃんと育てない。そこで育児したくない親の代わりに国家が子どもの養育に乗り出す。「国家の子どもたち」は13歳になったら親候補を自分で面接して選び、養子になる権利を持っている。タイトルの『ペイント』は「ペアレンツ・インタビュー」の略だ。

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