週刊エコノミスト OnlineゼロコストでPR SNS活用術

ウイズコロナの今だからこそ、SNSでPRを=笹木郁乃/1

 新型コロナウイルスの感染2年目となる2021年は、「PR元年」──。21年も師走に入り、多くの企業経営者や広報担当者にPRの基礎や活用法を伝授してきた私の感想だ。

 従来のマスメディアに加えウェブサイトやSNS(交流サイト)の普及は、我々に多くの情報をもたらした。しかし、ここ数年は多種多様な情報があふれている。その結果、売り込み型・プッシュ型の広告は敬遠されるように。

 また、昨年からのコロナ感染拡大は、対面での営業活動を難しくさせ、顧客とのコミュニケーションの形を大きく変化させた。さらに景気・業績の悪化により、企業の広告費縮小をもたらした。その結果、広告費を使わないPRの需要が急速に高まっている。

 一方、情報があふれるなか、信頼できる情報とは何か。それは第三者の評価、「口コミ」である。

 かつての購買モデルは、ある商品について興味を持ち→「欲しい」という気持ちを抱き→その商品を記憶したら購入する、という流れが主流だった。だが現在は、ある商品について興味を持ったあと「検索」→商品についての第三者の評価を確認→購入するというモデルに変化してきている。

 また、コロナ禍では顧客の購買行動が変化し、商品の認知から購入に至るまでの流れの比重がオンラインに置かれるようになった。SNSの接触時間が増加していることもあり、SNSでつながっている人や自分がフォローしている人からの情報や口コミに信頼を置き、購入に至るケースは多い。

 実際、子育て本の『母』(致知出版社発行)は、書店販売を限定し、SNS口コミ販売を軸にしたところ、発売1カ月で1万部を突破。共感してくれそうな一般女性に献本をし、SNSで口コミをしてもらったことが大きな理由の一つ。

「いいね!」をもらう

 ところで、企業のPR、すなわち「パブリック・リレーションズ」は、公衆(パブリック)との関係(リレーション)づくりのことを指す。広告は、企業が広告費を負担する代わりに、自社の商品・サービスの情報を自由に表現する手法である。情報をコントロールして発信することができるが、企業から顧客(消費者)への一方通行になりやすい。

 一方でPRの目的は、今風に言えば、自社以外の不特定多数の第三者に「いいね!」と言ってもらい、商品の購入やサービスの導入につなげることである。PR自体には金銭が介在せず、「いいね!」と思う気持ちと、心のつながりが存在する。

 私は、かつて寝具メーカー、エアウィーヴの広報担当をし、営業や広告を強化するよりもPRに注力。テレビ・新聞・雑誌に取り上げてもらった。結果、多くの方に商品が認知され、実際に使ってもらう中で、「いいね!」をもらえた。それによって、信頼できる話題のブランドとなり、さらなるメディア露出を高めるという好循環に。短期間に売り上げが、100倍超になるとは、私自身が信じられない出来事だった。

 この体験を通じて気づいたのは、PRとは「伝える力」を最大化し、無名のサービスを「選ばれるブランド」にすることだ。連載では、私の体験を踏まえ効果的なフェイスブックやインスタグラムなど主なSNSを活用したPR方法をお伝えする。

(笹木郁乃・LITA代表)


 ■人物略歴

笹木郁乃(ささき・いくの)

 1983年生まれ。山形大学工学部卒業後、アイシン精機に入社(研究開発に従事)。その後、寝具メーカー・エアウィーヴに正社員1号として入社。売上高を5年で1億円から115億円の急成長へ貢献。鍋ブランド・バーミキュラの広報を経て、2017年から現職。著書に『0(ゼロ)円PR』など。

インタビュー

週刊エコノミスト最新号のご案内

週刊エコノミスト最新号

4月30日・5月7日合併号

崖っぷち中国14 今年は3%成長も。コロナ失政と産業高度化に失敗した習近平■柯隆17 米中スマホ競争 アップル販売24%減 ファーウェイがシェア逆転■高口康太18 習近平体制 「経済司令塔」不在の危うさ 側近は忖度と忠誠合戦に終始■斎藤尚登20 国潮熱 コスメやスマホの国産品販売増 排外主義を強め「 [目次を見る]

デジタル紙面ビューアーで読む

おすすめ情報

編集部からのおすすめ

最新の注目記事