新規会員は2カ月無料!「年末とくとくキャンペーン」実施中です!

国際・政治 ワシントンDC

シカゴで試行、50超の市長も賛意 それでも米国人の過半数が不支持のベーシックインカム=峰尾 洋一

シカゴ市での実証にはライトフック市長の意向が Bloomberg
シカゴ市での実証にはライトフック市長の意向が Bloomberg

反対多数でも各地で進む ベーシックインカム試行=峰尾洋一

 シカゴ市議会は10月27日、市長が提案したベーシックインカムの実証実験計画案を可決した。これは月500ドル(約5・7万円)の現金を、低所得者5000人向けに1年間給付し効果を検証するもので、事業費は3500万ドル(約40億円)に及ぶ。

 ベーシックインカムとは、個人向けに、収入・資力・就職などの条件を付けず、定期的な現金支給の形で行われる公的扶助を指す。貧困対策に加えて、労働者に待遇の良い仕事を選択する余裕を与える、教育費用に充てられることで子供の教育水準が上がるといった効果が考えられる。

 一方、課題はコストだ。2020年大統領選の民主党予備選でアンドリュー・ヤン候補(当時)が提案したベーシックインカムは、18歳以上の国民に月1000ドルを支払う案であったが、事業費が年間2・3兆ドル(約260兆円)に上るという試算もある。これは新型コロナウイルス感染拡大が影響する前の19年の国家予算の半額を超える。更に給付に条件がないことで、仕事をする気のない者に支払われる恐れもある。米国では過去に実証実験プログラムや、地域限定・小規模のものは存在してきたが、本格導入はされていない。

 ここ数年、ベーシックインカムの導入に向けた社会実験が広がりを見せている。シカゴの例に先駆けて、19年、カリフォルニア州ストックトン市でのケースが注目を集めた。こちらはシカゴと異なり、総事業費数百万ドル程度の小規模のものだったが、対象グループの正規雇用率が28%から40%に改善されたことなど、さまざまな成果が報告された。この後、この実験の関係者が、ベーシックインカムのより広範な導入を目指す組織を立ち上げ、50を超える市長が参加を表明している。

 この流れを後押…

残り599文字(全文1349文字)

週刊エコノミスト

週刊エコノミストオンラインは、月額制の有料会員向けサービスです。
有料会員になると、続きをお読みいただけます。

・会員限定の有料記事が読み放題
・1989年からの誌面掲載記事検索
・デジタル紙面で直近2カ月分のバックナンバーが読める

通常価格 月額2,040円(税込)が、今なら2ヶ月0円

週刊エコノミスト最新号のご案内

週刊エコノミスト最新号

12月3日号

経済学の現在地16 米国分断解消のカギとなる共感 主流派経済学の課題に重なる■安藤大介18 インタビュー 野中 郁次郎 一橋大学名誉教授 「全身全霊で相手に共感し可能となる暗黙知の共有」20 共同体メカニズム 危機の時代にこそ増す必要性 信頼・利他・互恵・徳で活性化 ■大垣 昌夫23 Q&A [目次を見る]

デジタル紙面ビューアーで読む

おすすめ情報

編集部からのおすすめ

最新の注目記事