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香港立法会選挙 民主派の公認候補ゼロ 中国が混乱の芽を摘む=江藤和輝
香港で立法会(議会)議員選挙の投票が12月19日に行われるのに向け、立候補者による選挙運動が始まった。今回は、2019年の逃亡犯条例の改正反対デモを受けた選挙制度改善後に行われる初の立法会選挙となる。
中国の全国人民代表大会(国会)常務委員会は今年3月末に立法会議員の選出方法と採決プロセスを定めた基本法付属文書の修正を可決した。これにより香港の立法会はこれまでの70議席から90議席に拡大。選挙委員会から40人、職能別団体から30人、地区別直接選挙で20人を選出する。主に行政長官の選出を担っていた、選挙委員会による選挙枠が新たに加わった。
一般選挙人が投票する地区別直接選挙枠は35議席から縮小。選挙区は5区から10区に増え、各区で2人ずつ議員を選出。比例代表制は廃止された。立候補には選挙人100〜200人、選挙委員会の5分野からそれぞれ2〜4人の推薦が必要となるため、従来の民主派(非親政府派)にとってはハードルが高いと言われていた。
選挙主任に提出された立候補届け出は、直接選挙枠で35人、職能別選挙枠で68人、選挙委員会選挙枠で51人の計154件。90議席すべてで競争があり、返還後、初めて無投票当選がいない立法会選挙となる。
代表的な民主派政党は公認候補を擁立できていない。一方で直接選挙枠では、穏健民主派の香港民主民生協進会(民協)元主席で元立法会議員の馮検基氏、民主思路の陳進雄氏、新思維の黄俊瑯氏、元民主党メンバーの黄成智氏、過激な民主派政党だった人民力量の元メンバーである曽麗文氏が立候補するなど、10選挙区すべてに非親政府派の候補が出馬する。
153人を容認
候補者資格審査委員会は11月19日、立候補届け出の審査を完了し、153人の立候補が認められ、その中には逃亡犯条例の改正反対デモのスローガンをネット上で掲げた、元人民力量の譚香文(マンディータム)氏も含まれている。一方で医療衛生界で立候補届け出を提出した劉子進氏は、政府にアルバイトとして雇用されていることから届け出が無効となった。
政府高官は、「候補資格が確認された候補者が異なる政治派閥から出馬しており、新たな選挙制度が議会を一色に染めるものではないことが証明された」と指摘している。
立法会では過去数年、民主派による議事妨害が激しかったが、一部議員の資格喪失に抗議した民主派の総辞職で最後の1年はスムーズに運営された。次期立法会は一部の親政府派でない候補が当選したとしても、それによる議事妨害はなさそうだ。中国が着々と政治的混乱の芽を摘んでいるとの見方もある。
(江藤和輝・香港ポスト編集長)