週刊エコノミスト Online 下がるマンション 不動産大予測
Jリートでコロナの勝ち組は星野リゾート、中小型オフィス
2022年のJリート(不動産投資信託)市場は、ワクチン接種の進捗や経済再開を見越し、緩やかながら上昇基調となるだろう。東証REIT指数(1月13日終値2013・81ポイント)の想定レンジは、2000~2400ポイントで、3月末に2250ポイント、6月末に2250ポイント、9月末に2200ポイント、12月末に2300ポイントと予想している。2000ポイント程度で想定すると年約3・6%の利回りが確保されるという高利回り性から、底堅い展開になると考える。(「下がるマンション 不動産大予測」特集はこちら)
22年前半は、3月末を見据えた主に地銀など国内金融機関による決算対策売りなどで上値が抑えられようが、その後は経済再開に対する期待感から堅調に推移するだろう。
22年は米国で3~4回の利上げが想定されるため、米国金利の利上げ前後の動きと連動性が強い日本の10年国債利回りの動きには要注意だ。機関投資家はJリート投資を国債金利との対比で行うためだ。具体的には、Jリートの予想分配金利回りと10年国債利回りの差(スプレッド)が大きいか、小さいかに注目する。金利上昇はスプレッドの縮小につながるため、投資を手控える要因になる。
ホテル系で唯一の勝ち組
新型コロナウイルスで外国人旅行客は激減し、ホテルのインバウンド需要は消滅した。また緊急事態宣言の発令で観光産業は大打撃を受けた。しかし、こうした中でホテル業界が新たに取り組んだのがマイクロツーリズムだ。感染拡大の防止に留意しながら、自宅から1~2時間で気軽に行ける圏内で地域の魅力に触れてもらおうという旅行で、こうした需要を取り込んでいる宿泊施設もある。星野リゾートは「星のや」「界」「リゾナーレ」といったブランドを有し、その受け皿となった。
同社をスポンサーとする星野リゾート・リート投資法人は、ホテル型リートの中で唯一の勝ち組となっている。コロナ前の19年末と21年末時点のJリートのホテルセクター全体と星野リゾート・リート投資法人の時価総額を比べると、ホテルセクター全体は約26%のマイナスだったが、星野リゾート・リート投資法人は約30%のプラスとなった。
同リートの運営物件の稼働率は概ね7割前後で、コロナ前の8~9割程度まで回復した。投資口1口当たり純資産(NAV)と投資口価格の比率(NAV倍率)、及び予想分配金利回りでみたバリュエーション(価値評価)は、物流施設型リートと並ぶ水準にあり、投資家からの高い評価が示されている(図)。
オミクロン株による感染拡大を受け、「GoToトラベルキャンペーン」の再開は未定となっている。しかし、今後感染が減少し、落ち着きを取り戻した際には再開が期待され、旅行需要の回復がホテル型リートの業績改善に寄与することが確認できれば、投資口価格の上昇も期待できるだろう。
中小企業のオフィス需要は強い
コロナ禍でテレワークの浸透によりオフィス・スペースを見直す動きが顕著だ。多くのオフィスビルで空室が発生した。こうした環境下で、大型オフィスビルを運用対象とするJリートは、入居するテナント企業のスペースの縮小や退去が引き続き懸念されている。
一方で、中小型ビルは状況が異なっている。最新の設備を持つ中小型オフィスビルが少ない中で、業績が好調な中小企業によるオフィス需要は依然として強い。中小型オフィスビルでは、業績好調な中小企業から100~200坪(約330~660平方㍍)程度の需要があり、館内増床や集約移転する事例が目立つ。一例では、不動産コンサルティングのTAPPは、21年12月に事業拡大と業務効率化のための都内で本社移転を行った。
住宅系も回復が見込まれる。総務省によると東京都は21年11月まで7カ月連続で人口流出となった。テレワークが定着し、都内から郊外部へ引っ越す動きが広がっているためだ。住宅型リートでも東京23区の稼働率が低下し、郊外部にシフトする動きが見られた。ただし、例年2~3月は入学や就職、異動の需要を取り込み、住宅型リートの稼働率が改善する傾向がある。22年は経済再開が期待できる中、例年通りの繁忙期になり、住宅型リートの稼働率は回復すると見ている。
(並木幹郎・岡三証券シニアアナリスト)