週刊エコノミスト Online 下がるマンション 不動産大予測
不動産ファンドに資金流入 物流施設は完成前に買い手
三菱商事の子会社で不動産投資を手掛けるダイヤモンド・リアルティ・マネジメントの竹内竜太社長に今後の市況見通しと投資戦略を聞いた。(聞き手=桑子かつ代・種市房子/編集部) (「下がるマンション 不動産大予測」特集はこちら)
―― コロナ禍でも世界の不動産投資は活況だ。リーマン・ショック時との違いは。
■当社は日本と北米に投資しているが、北米は過熱に近い好調ぶりだ。2006~07年のリーマン・ショック前の好況時は、入居テナントの需要は順調だったが、08年のリーマン・ショックで世界で資金の流れが突然停止した。今回のコロナ禍はその逆で、経済を支えるための潤沢な資金が不動産市場に流入しているが、物件は好調と不調で二極化している。
人の動きが制限され、ホテルなど一部の不動産の稼働が悪くなっている。飲食やインバウンドを中心とする商業施設は厳しい。オフィスは好不調の中間だ。テレワークが浸透する一方、オフィスでなければ出来ない仕事があると社会が気づいたためだ。新しいことを見い出す、物事を変える、そのためのチーム作りは、オフィスでないと出来ない。オフィスの需要が大きく落ち込むことはないだろう。
―― ネット通販の普及などで物流施設への投資が急拡大している。北米での投資はどのように行うのか。
■二通りのやり方がある。三菱商事の北米子会社が開発した物件を、当社のファンドが買って運用する。また、開発プロジェクトそのものにファンドから資金を投入する。前者は賃貸収入を、後者は最終的な物件売却によるキャピタルゲイン(値上がり益)を得る。
物流施設への投資は、従来、建設工事の終了とテナント入居を確認して投資家が行うものだったが、今は竣工前の段階で買い手が付くような状態だ。好立地の物流施設ではキャップレート(年間賃料を不動産価格で割る還元利回り)も3%台で、5年前の4%台前半と比べて低下傾向にある。
運用額は過去最高
―― 不動産ファンドへの投資家の関心はどうか。
■ニーズは高い。背景は金融緩和で、世界で潜在的な投資資金がだぶついている。当社は新たな不動産ファンドを21年だけで複数本立ち上げた。基幹ファンドの国内物流施設を主な対象とする私募リートは12月に2年ぶりとなる大規模な増資をして、運用額を拡大した。
当社全体としてはコロナ禍の中、投資家からの受託資産残高を20年3月より約680億円積み増し、7574億円(21年9月現在)と過去最高だ。
日本はコロナ禍の影響が海外と比べて小さく、不動産の稼働と賃料収入が安定していることが高く評価されている。北米はさらに経済、人口の拡大が不動産市場の好調を支える要因になっている。
米国では今後複数回の利上げが予想されるが、なだらかなペースの利上げを投資家はすでに織り込み済みだ。当社が投資対象とする物流施設の賃料は、直近5年間の全米平均で毎年4%程度上昇しており、今後も強含むとみている。利上げの影響は賃料の伸びで一定程度吸収できるだろう。
デジタル証券ファンド
―― DX(デジタル・トランスフォーメーション)機運の加速で不動産市場でもブロックチェーン技術などを利用して、資産価値がある不動産をデジタル証券化し、株式のように自由に売買できるようにする動きがある。
■国内の不動産ファンドの運用会社で先行しているところが数社ある。当社も出来れば近い将来、不動産を裏付けにしたデジタル証券に投資する私募ファンドを立ち上げたいと考えている。賃料が安定している国内の生活密着型の商業施設を裏付け資産の候補として想定している。不動産をデジタル証券化することで、運用面での効率化やさらなる投資家の獲得が見込まれるため、検討していきたい。具体的なファンドの規模や時期は未定だ。