中南米系は民主支持? 揺らぎ始めた選挙の通説=古本陽荘
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米国政治の将来を左右するのは人種構成の変化だと言われてきた。主流だった白人が多数派ではなくなり、人口の増加率が比較的高い中南米系の市民の影響力が強くなる。その結果、白人保守層を支持基盤とした共和党はやがては大統領選で勝てなくなる──。常識のように語られてきたこの説が今、揺らぎ始めている。
民主党が将来、有利になると考えられてきたのは、人口増加率が高い中南米系の支持が民主党に偏っていると考えられてきたからだ。だが、米紙『ウォール・ストリート・ジャーナル』(WSJ)が公表した世論調査(2021年11月16〜22日実施)がこの前提に疑問符をつけた。「議会選挙で共和、民主のどちらの候補に投票するか」との問いに対し、「共和党」と答えた人、「民主党」と答えた人がともに37%で並んだのだ。この調査の傾向が確かであれば、中南米系の票が増えることで、民主党が有利になるとは言えなくなる。
調査では、仮に24年の次期大統領選で、再びバイデン大統領(民主)とトランプ前大統領(共和)が対決した場合、どちらに投票するかも尋ねた。中南米系の回答者に限ると、バイデン氏が44%、トランプ氏が43%でほぼ横並びだった。
根付く保守の価値観
別の調査でも中南米系の「共和党接近」の傾向が出ているほか、事前の予想を覆して共和党のヤンキン候補が勝利した21年11月の南部バージニア州知事選でも、AP通信の調査では、中南米系の投票先は共和と民主で互角だった。
かつて、西部アイダホ州選出の共和党の下院議員にラウル・ラブラドール氏という人物がいた。プエルトリコ系で、妻の故郷のアイダホに移住。州議会を経て下院議員を11年から4期8年務めた。保守系の団体が主催した集会で彼が演説した内容が印象的だった。「中南米系の市民の価値観は、保…
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週刊エコノミスト
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