経済安全保障の核心はアベノミクスの修正にあり=平田崇浩
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「なろう系」というネット界隈の用語をご存じだろうか。「小説家になろう」という小説投稿サイトで人気を集めるストーリー設定の一類型を指す。平凡な現代人が異世界に転生し、現世ではごく普通だった知識や経験を生かして活躍するのが基本。そうした物語を「なろう系小説」と呼ぶそうだ。
「なろう系総理」
昨年10月に岸田文雄首相が就任した直後から、岸田氏を「なろう系総理」と評する書き込みがネット上で話題になった。
いわく「メモを取りながら質問を受ける!更には質問と回答がかみ合う場面も」「なろう主人公だろこれ」といった具合。国会審議や記者会見で質問にまともに答えなかった安倍晋三元首相─菅義偉前首相の政権が9年近く続き、国民への説明責任を極度に軽視する風潮がまん延した永田町を異世界に見立てたアイロニー(皮肉)だ。
普通に質疑応答をする平凡な政治家(岸田氏)が異世界の首相になると、その振る舞いが新鮮に映る。「日本語ができるだけで評価される日本の総理」「安倍ちゃん、ガースー(菅氏)が土台作りをしておいてくれたおかげな」──。
その岸田氏が安倍─菅政権を反面教師にして取り組んできたのが新型コロナウイルス対策である。岸田首相と松野博一官房長官が繰り返す「危機管理の要諦は最悪の事態を想定すること」とは、国民の生命・財産を守るべき政治家の気構えとしてはある種「普通」の常識と言わなければならない。それをあえて強調するのは「根拠なき楽観論に寄りかかって対応が後手に回った」との批判を浴びた過去2年近くの政権対応からの転換を印象付けたいのだろう。
そうして迎えた2022年。岸田政権は外国人の入国禁止措置などの水際対策によってオミクロン株の国内への侵入を遅らせてきたわけだが、年明けには感染が急拡大し、コロナ対策の真価が問われる事態に直面している。
1月4日の年頭記者会見で岸田首相は「一度物事を決めたとしても、状況が変化したならば、さまざまな議論が行われた結果を受けて柔軟な対応をすることも躊躇(ちゅうちょ)してはならない」と語ってみせた。18歳以下に10万円相当を給付するに当たって迷走した政府対応を釈明したかったのだろうが、この発言も、批判を受け付けない強硬姿勢の目立った安倍─菅政権への当て付けに聞こえる。
“お友だち”の声だけでなく批判にも耳を傾け、必要なら大胆な修正も辞さない。そんな岸田氏の「聞く力」を発揮してもらいたい課題がアベノミクスの見直しだ。
昨年12月、安全保障の専門家らが東京都内で開いた勉強会に筆者が参加した際の話をしたい。
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週刊エコノミスト
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