岸田外交の最大の不安定要因は、軍事力強化に傾く米バイデン政権
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岸田外交の不安定要因は「バイデン氏の米国」=及川正也
年明けの日本外交は、同盟国である米国との関係強化から始まった。米国と中国・ロシアの対立が激化する国際情勢を踏まえれば、外交の常道といえるだろう。
問題は、「同盟強化」の将来像だ。1月7日にテレビ会議形式で行われた外務・防衛担当閣僚による「2プラス2」といわれる安全保障協議は、その一端を示した。
「日本は、国家の防衛を強固なものとし、地域の平和と安定に貢献するため、防衛力を抜本的に強化する決意を改めて表明した」
「日本は、ミサイルの脅威に対抗するための能力を含め、国家の防衛に必要なあらゆる選択肢を検討する決意を表明し、米国は日本の決意を歓迎した」
「極超音速技術に対抗するための将来の協力に焦点を当てた共同分析を実施することで一致した」
終了後に発表された共同文書には、日本の軍事的な役割を拡大する文言がちりばめられた。
将来的には国内総生産(GDP)の2%を視野に入れる防衛費の増額、相手のミサイル発射拠点などをたたく「敵基地攻撃能力」の保有、中露や北朝鮮が開発している音速をはるかにしのぐスピードで滑空する最先端ミサイルへの対処──。「2プラス2は今回で20回目だが、これほど軍事色が強い文書は初めてではないか」と、自民党の外交関係者は漏らす。
判然としない米国の戦略
とくに注目されるのが、米軍と自衛隊の役割分担が進んでいることを印象付けたことだ。共同文書では「同盟の役割・任務・能力の進化および緊急事態に関する共同計画作業についての確固とした進展を歓迎した」と明記した。
協議に出席した林芳正外相は具体論には言及しなかったが、自民党外交筋は「昨年春の日米首脳会談でクローズアップされた台湾海峡問題も含まれているとみるのが当然だろう」と語る。オースティン米国防長官は「地域の平和と安定に貢献する日本の能力の高まりを反映し、我々の役割と任務を進化させる」と述べ、日本の役割拡大を評価した。
東西冷戦当時の米国を中心とする同盟の構図は「垂直型」だった。強大な米国に欧州やアジアの同盟国がぶら下がっていた。今は「水平型」だろう。米国1国ではもはや支えきれず、同盟国が応分の役割を担う時代だ。
もちろん、日本も時代に適応した同盟の姿を追求すべきだ。だが、日本側が懸念しているのは、相対的に国力が低下している米国がどうやって中露との戦略的なバランスを保とうとしているのか判然としないことだ。「今年の最大の不安定要因は米国だろう」という外交関係者は少なくない。
外務省関係者によると、バイデン米政権にとって、今年の最大の難関は11月の中間選挙だ。与党・民主…
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週刊エコノミスト
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