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実はゲームやエンタメと親和性? ソニーがEV本格参戦を決めたワケ=土方細秩子
ソニーが新会社設立へ EVの2モデル生産で本格参戦 映像、ゲームとも高い親和性=土方細秩子
ソニーは電気自動車(EV)の新会社「ソニーモビリティ」を今春に設立する。ソニーグループの吉田憲一郎社長が1月5日、米ラスベガスで開催された世界最大級の家電IT見本市「CES」の関連イベントの場で明らかにした。ソニーのEV事業の本格参入により、「EVはクルマではなく家電」というイメージが強まり、自動車業界への他業種からの参入がますます加速しそうだ。
ソニーは2020年のCESで、EV試作車「VISION─S(ビジョンS)」を公開し、その動向が注目されていた。今回のCESにはビジョンSの最新型プロトタイプ「ビジョンS01」と、7人乗りスポーツタイプ多目的車(SUV)「ビジョンS02」のプロトタイプを出展。新会社ではこの二つのEVモデルの製造販売を目指す。
ビジョンSについては20年に欧州で走行実験を実施。さらに21年4月に5G(第5世代移動通信システム)を使った走行実験をしたこともあり、業界関係者らの間では「ソニーが本気で自動車業界に乗り込むのでは」とうわさされていた。当時、ソニー側は「車載エンターテインメントシステム、コネクティビティーなどを使ってどのようなサービスが提供できるのか、ということを実証実験するために車を製作した」と説明していたが、当初から本格的な自動車ビジネスへの参入が目的だったのだろう。
車内は「エンタメ空間」
今回、SUVタイプを投入する目的については「異なるライフスタイルに合わせた車のタイプを提供し、より広い室内でエンターテインメントなどを楽しめる環境を作り出すため」(吉田社長)とする。ソニーグループは豊富なエンターテインメントのコンテンツを持っている。例えば、車内に設置するモニターを利用した映像作品の上映やゲームの提供といったことも考えられる。これまで携帯電話やテレビ、パソコン機器などを作ってきたソニーグループにとって親和性は高い。
二つのEVモデルは同じプラットフォーム(車体基盤)を使用し、人間でいえば「目」に相当するCMOS(相補型金属酸化膜半導体)センサーと、距離や方向を測定するLiDAR(ライダー)センサーを360度搭載し、安全性に配慮している。
レベル5を視野
2モデルにおいては、5段階で区分される自動運転技術のうち、レベル2に当たる先進運転支援システム(ADAS)の認定を欧州で目指すという。最終的には、ハンドルやブレーキ操作が不要の完全自動運転(レベル5)を視野に入れた計画とみられる。
ソニーモビリティには、ソニーのAI(人工知能)やロボティクス部門も併合される。新しい価値やサービスの創出が期待されており、日本の自動車メーカーだけではなく、EVでトップを走る米テスラにとっても手強いライバルに成長するかもしれない。
(土方細秩子・ジャーナリスト)