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ゼロコロナは「張り子の虎」、中国の政策転換が焦点=坂東賢治

冬季五輪会場の「国家体育場(鳥の巣)」。五輪後に政策転換はあるか(北京) Bloomberg
冬季五輪会場の「国家体育場(鳥の巣)」。五輪後に政策転換はあるか(北京) Bloomberg

中国「ゼロコロナ」に強まる懐疑 習指導部の政策転換が焦点に=坂東賢治

 政治学者のイアン・ブレマー氏率いる米調査会社「ユーラシア・グループ」が今年の世界の「10大リスク」のトップに中国が新型コロナウイルス対策に採用してきたゼロコロナ政策の失敗を挙げた。

 感染力の強いオミクロン株などの流行でロックダウン(都市封鎖)が全国に拡大すれば消費や生産を圧迫される。世界のサプライチェーンの混乱が助長され、インフレ圧力が増すというわけだ。

 昨年末から人口1300万人の西安市が閉鎖され、年明けには北京に近い天津市でも市中感染が確認された。リスクが顕在化したかのようにも見える。ダウ・ジョーンズの情報誌『バロンズ』は論評記事(1月6日)で「貿易と生産拠点としての中国の比較優位が失われる」と警告した。

 香港紙『サウスチャイナ・モーニングポスト』も記事(1月7日)で「ゼロコロナ政策は初期には成功を収めたが、財政リスクの増大と国民の不満で非現実的になってきている」という専門家の見方を伝えた。

「三重の圧力」

 猛反発したのが中国メディアだ。『環球時報』紙は社説(1月9日)で「戦場から逃げてきた敗残兵が勇敢に戦う戦友を背後から撃つようなもの」と表現した。

 英字紙『チャイナ・デーリー』(1月9日)は1日100万人を超える新規感染者が米国の医療システムに大きな負荷を与えていると指摘し、ユーラシア・グループに対して「お笑い草を作り出すのをやめて自分の国の心配をすべきだ」と反論した。

 しかし、2月4日の北京冬季五輪開幕を前に天津市でもオミクロン株の市中感染が伝えられた。中国メディアの強硬な姿勢と裏腹に中国当局もそのリスクに気づき始めているという指摘もある。

 ゼロコロナ政策の柱の一つは厳しい水際対策である。中国と世界の…

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週刊エコノミスト

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