「原発はグリーン」のEU認定が波紋、仏は歓迎で独は世論割れる=熊谷徹
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波紋を呼ぶEUの原発推奨 仏は歓迎、独は世論割れる=熊谷徹
英紙『フィナンシャル・タイムズ』は、2022年1月1日付電子版で、「欧州連合(EU)は、原子力と天然ガスによる発電を地球温暖化に歯止めをかけることに貢献する事業のリスト(タクソノミー)に記載し、グリーン認定することを提案した」というスクープ記事を放った。
同紙は、「EUは、原子力発電所については最新技術を使い、50年までに放射性廃棄物処理の計画を準備するなどの条件を満たせば、タクソノミーに記載することを提案。また天然ガス火力発電所を記載するための条件としては、発電量1キロワット時当たりの二酸化炭素の排出量を100グラム以下に抑えることや、35年までに燃料を再生可能エネルギーから製造されるグリーン水素に切り替えることを挙げている」と報じた。
EUは21年大みそかの深夜に加盟国にこの提案を送りコメントを求めた。タクソノミーに記載された事業は、「持続可能性がある経済活動」と見なされ、機関投資家などからの資金が集まりやすくなる。
ドイツでは同提案への批判が強い。公共放送ARDは1月1日に「ハベック経済・気候保護大臣(緑の党)は、『放射性廃棄物が長年にわたり人類と環境に負担となることを考えると、原子力をグリーンエネルギーと認定するのは誤りだ』とEU提案に反対した」と報じた。ドイツは11年以来脱原子力を進めており、今年末には最後の3基の原子炉のスイッチを切る予定だ。またオーストリア政府も、「EUが原子力をタクソノミーに記載した場合、欧州裁判所に提訴する」という方針を打ち出した。
同提案は電力の7割を原子力でまかなうフランスの要請によるとの見方が強い。同国のネット通信社RNDは1月3日付電子版で「EU提案は、フランスの国営電力会社…
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週刊エコノミスト
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