ジェンダー意識が高い米国で、女性に徴兵登録義務が課されていないことへの論争=峰尾 洋一
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「国難には全員で戦うべき」 女性の徴兵登録求め論争=峰尾洋一
性別による権利の違いが常々意識される米国において、いまだに女性に門戸を開いていないものが、徴兵登録である。女性の徴兵登録の問題はワシントンDCでは身近な話題だ。米国では、国防に伴う歳出権限を政府に与える「国防授権法」が毎年欠かさず成立する。昨年末に成立した2022年同法でも、女性の徴兵登録に道を開く規定の挿入を巡って大きな論争となった。
本論に入る前に、米国の徴兵制・徴兵登録について簡単に説明する。米国では南北戦争やベトナム戦争などの際に徴兵が行われてきたが、ニクソン政権下の1973年に制度自体が停止され、続いて75年には徴兵対象となる国民の登録も終わりを迎える。
しかし、80年、ソ連のアフガニスタン侵攻を踏まえて、有事の徴兵導入を想定した登録制度が復活する。以降、現在に至るまで18~25歳の男性国民と男性移民は、当局への登録が義務付けられている。
「男女区別は合憲」判例
現行規則では、実際の徴兵導入には、「志願兵以上の兵力が必要である」旨の大統領の請求と、既存法の修正という立法手続きが必要になる。その上で仮に導入された場合、登録された者を対象に抽選で徴兵が行われることとなる。
制度発足から程ない81年、性別による扱いの違いを違憲とする裁判が起こされたが、当時は女性の戦闘(Combat)への参加が軍の規定で禁止されていた。このため、男女の区別があることは違憲ではないという最高裁判決が下された。だが、以降も、男性に限った登録義務は女性差別だとして議論が続いてきた。
冒頭の22年国防授権法で、女性の徴兵登録を提案した立役者は、ペンシルベニア州選出のフーラハン民主党下院議員だ。彼女自身も空軍での従軍経験があり、女性が徴兵登…
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週刊エコノミスト
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