経済・企業

インフレ次第で年6回もありうるFRBの利上げ=加藤出

米FOMC FRBは3月利上げを予告 インフレ次第で年6回も=加藤出

 米連邦準備制度理事会(FRB)は、1月26日の米連邦公開市場委員会(FOMC)声明文で、次回3月15~16日のFOMCでの利上げ開始を予告した。一方、市場では、米国での39年ぶりの高インフレを背景に、3月以降、年内7回のFOMCで0・25%の連続利上げや、0・5%への利上げ幅拡大もあり得るのではとの予想が台頭している。

 パウエルFRB議長はFOMC後の記者会見で、そうした予想を否定する機会は何度もあったにもかかわらず、(1)利上げ経路の予測に自信を持つことは現時点で不可能、(2)今後の情勢に「謙虚に機敏に対応」する、(3)ただし前回の引き締め時に比べ今回は経済が「大幅に力強く」、労働市場は「非常にタイト」であり、それらは「今後の政策に反映されると思う」──の3点を繰り返した。

 パウエル議長はむしろ、市場が先読みして引き締めを織り込んでいくことを積極的に歓迎するコメントも発していた。FRBが実際にアクションをとる前に経済に引き締め効果が表れるからである。FRB幹部が最近注目している労働市場情勢指数(LMCI、カンザスシティー連銀が失業率や賃金など雇用関連24指標を基に算出)は、人手不足などにより過熱状態を示している。

量的引き締めも

 だが、政策金利からインフレ率を差し引いた実質短期金利は深いマイナスで、「早く引き締めなければ」とFRBが焦っても不思議はない(図)。FRBは、衝撃が強くなり得る利上げ幅拡大よりも、0・25%ずつ利上げの頻度を高める方を好むだろう。現時点で筆者は、今年の利上げは5回、年後半のインフレ低下ペースが遅そうであれば計6回になると予想している。

 FRBのバランスシート縮小(量的引き締め、QT)については、具体的手法が5月に公表され、市場への周知が進んだ後に、最速で6月に翌月からの開始が決定されると思われる。FRBが前回バランスシートを縮小した18~19年は、月間の証券残高の減少額を慎重に100億ドルから始め、1年かけて最大速度の500億ドルへ引き上げた。

 今回はFRBの資産が圧倒的に膨張しているため、2倍の200億ドルから始め、半年程度で800億~1000億ドルへもっていく可能性があるだろう。これまでの超金融緩和策で膨張した資産バブルを大規模に破裂させてしまったら、米経済は大変な打撃を受けてしまう。最優先はインフレ制御だが、資産市場の激しいクラッシュは回避したいという、針の穴を通すような困難な政策にFRBは今、取り組もうとしている。

(加藤出、東短リサーチ・チーフエコノミスト)

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