経済・企業 東証再編で上がる株・下がる株
「『がっかり』でも評価できる東証再編」 渡邉庄太・レオス・キャピタルワークス運用本部長インタビュー
機関投資家の評価 渡邉庄太 「がっかり」でも正しい方向性 上場企業の尻に火が付いた
<INTERVIEW>
機関投資家は東証再編をどう評価するのか。投資信託「ひふみ」シリーズで1兆円超を運用するレオス・キャピタルワークスの運用本部長に話を聞いた。
(聞き手=稲留正英/和田肇・編集部)
── 今回の東証の市場再編をどう評価するか。
■プライム市場でも銘柄数が想定ほどに絞り込めなかったので、「がっかり」という意見はその通りだが、ネガティブでもない。スピードは遅いが、改革の方向は正しい。
── プライム移行に際して、296社が適合計画書を出した。
■計画書を見るのは投資チャンスだ。いくつかパターンがある。一つ目は、プライム市場に残るべく、利益を倍増させるなど、企業価値向上へ意欲的な計画を提示した会社で、かなりの数があった。二つ目は、増配や自社株買いを通じ、企業価値を向上しようとしている会社だ。こうした点はポジティブに評価できる。
── コーポレートガバナンス・コードも改定され、プライム銘柄は海外投資家との対話力も求められている。
■日本市場は、外国人が売買で7割、保有で3割を占めているので、そうした人たちを無視して存在することはあり得ない。遅まきながらも、対話の姿勢を強化することは良いことだ。
── 企業と話して、そうした姿勢の変化は感じるか。
■今回の計画書を見るだけでも、尻に火が付いた感はある。地方では、採用面で有利だから東証1部というブランドが欲しくて上場している会社が大半。東証からイエローカードを食らって、改めて株式市場に上場している意味を考え直している。
── 日本オラクルなど時価総額が1000億円以上でスタンダードを選んだ企業もある。
■私は、プライムが至上、スタンダードはそこそこ、グロースは玉石混交という、一つの価値観で判断することは好きではない。各社が主体的に身の丈に合った市場を選んだ結果であれば尊重すべきだ。当社は、良いインパクトを社会、資本市場に与える、もしくは製品やサービスを通じて顧客を豊かにすることに貢献した会社は、どんな市場でも評価する。
ダイナミズムがない
── フリーなど、プライムに行く実力のある銘柄がグロースを選んだケースもあった。
■米国にはニューヨーク証券取引所に上場していないけれど、ナスダックに上場している会社はいっぱいある。日本を代表する時価総額上位の企業がグロース市場に上場していてもいいと思う。
── 日本の株式市場の課題は。
■日本市場には米国市場のように、時価総額上位が毎日入れ替わるようなダイナミズムがない。しかし、これは市場再編で解決する話ではない。ベンチャー企業のインキュベーション(成長促進)機能や、市場に上場する以前の起業家たちを応援したりする仕組みについて議論が必要だ。
(渡邉庄太、レオス・キャピタルワークス運用本部長)
■人物略歴
わたなべ・しょうた
1997年、大和証券投資信託委託入社。アナリスト、ファンドマネジャーとして日本株運用を担当。2006年にレオス入社、15年運用部長に就任。21年4月から現職