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経済・企業 東証再編で上がる株・下がる株 

プライム上場“経過措置”の注目銘柄はこれだ=菊地正俊

注目「適合計画書」 ハイパーは配当性向引き上げ ROE目標掲げた酒井重工業=菊地正俊

 東証は1月11日、4月からの市場再編に伴い全上場企業3777社が移行する先の市場を発表した。昨年6月末の移行基準日でプライム市場の上場基準に未適合だった東証1部上場644社のうち、「上場維持基準への適合に向けた計画書」(適合計画書)を提出した296社すべてがプライムへの移行を認められた。筆者は296社の適合計画書を精査したが、その中で、株価材料として注目のものを挙げたい。(表の拡大はこちら)

 適合計画書では、中期経営計画遂行による業績向上、IR(投資家向け広報)やコーポレートガバナンスの強化、株主還元策の3点セットを掲げているところが多い。だが、抜本的な資本政策の見直しを発表した企業は少なく、そうした企業は評価される。昨年6月末の流通時価総額が25億円だったパソコン販売のハイパーは、現行の5年平均EPS(1株当たり利益)の35%をめどに配当する方針を、2027年度までに配当性向50%以上に引き上げ、株価2100円超を目指すと発表した。

 ERP(統合基幹業務システム)支援のテクノスジャパンもこれまでのみなし配当原資(連結経常利益に実効税率を掛けたもの)の35%以上の還元方針を、23年3月期より株主優待を入れたDOE(株主資本配当率)5〜5・5%に変更する還元拡充を発表した。

 基準日で流通時価総額が36億円だった給排水設備のエプコはDOE8%及び配当性向50%の株主還元方針を打ち出している、機関投資家の評判が良くない株主優待を廃止する一方、株式売却益で得た資金で期末配当を2円増配した。

「身の丈」のスタンダード

 大末建設は23年3月期に総還元性向を30%程度から、50%以上にすることなどを発表し、株価は発表翌日に16%上昇した。自動車用ゴム製品のフコクは、配当性向の目標は30%と特徴があるわけではないが、業績回復を背景に1株当たり配当金を21年3月期の22円から22年3月期に49円と2倍以上とし、24年3月期に55円まで増やす計画とした。

 道路機械の酒井重工業は適合計画書で株主価値の向上をうたい、ROE(株主資本利益率)を20年度の0%から25年度に8%に引き上げる目標を掲げた。ROEが3%を下回る場合は配当性向100%、3〜6%の場合はDOE3%、6%超の場合は配当性向50%とし、25年度までに5億〜20億円が上限の自社株買いを柱とする株主還元策を発表している。

 適合計画書における株価の適正価格の計算が、高いPER(株価収益率)の想定に基づく「言い値」であることが多い中、自動車部品の河西工業は、理論株価の算定に外部専門家による類似業種比較水準PER6・5倍を使ったことが評価されよう。

 一方で、スタンダード市場を選んだ東証1部企業は344社あった。実現が難しい適合計画書を策定するよりも、身の丈にあった市場を選んだ企業を筆者は評価したい。中古車販売のケーユーホールディングス(HD)はスタンダード市場を選んだ理由として、海外投資家比率が高い状況にないこと、売買代金などの増加は自社による努力だけでは難しい要素であることなどを挙げた。「英文資料を開示すれば外国人保有比率が高まる」「IR活動を強化すれば売買代金が増える」とした企業が多かったのとは対照的である。

 インプレスHDは中長期の成長戦略実現を優先するためにスタンダード市場を選択し、スタンダード市場の中で目立つ企業になることを目指すとした。油研工業はプライム基準を満たすのに要するコンプライアンスや人的コストなどを考慮して、スタンダード市場を選択した。三菱食品は「スタンダード市場を選択するものの、より高いガバナンス水準への強化や開示の拡充を図るなど、プライム市場に求められる企業同等の水準を満たすべく、経営基盤強化に着手している」と述べたことが評価ポイントとなる。

(菊地正俊・みずほ証券チーフ株式ストラテジスト)

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