連合が自民と距離縮める 立憲との選挙協力にひび割れ=中田卓二
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連合がどこか変だ。夏の参院選が迫っても立憲民主、国民民主両党への支援を明確にせず、むしろ岸田政権との間合いを詰める。約700万人の組合員を擁する労組のナショナルセンターは、政治にどう関わろうとしているのか。
1月下旬、参院選に関する連合の基本方針の素案が報じられ、政界に波紋を広げた。昨年10月に就任した芳野友子会長の意向を踏まえ、選挙区選挙で「目的が大きく異なる政党や団体等と連携・協力する候補者は推薦しないという姿勢を明確にする必要がある」と提起。共産党との選挙協力に事実上のノーを突き付けた。
それだけではない。旧立憲、旧国民両党が合流した現在の立憲を「連合総体として支援」するという昨年の衆院選の基本方針から一転。参院選では、連合本部は立憲、国民両党と「必要な調整にあたる」にとどめる。
組合員の減少と保守化
一方、比例代表では構成組織(産業別労組)が擁立する9人全員の当選を掲げた。そのうち5人は立憲、4人は国民から立候補予定だが、個人名の得票が多い順に当選する非拘束名簿式のもとでは、政党の看板以上に、個々の産別の地力が勝敗を左右する。つまり、組織内候補が何人当選するかは連合の政治力のバロメーターだ。
2016年と19年の参院選で当選者はいずれも8人だった。9人という目標は決して低くない。厚生労働省の労働組合基礎調査(21年6月30日現在)によると、労組の推定組織率は16・9%で、前年から0・2ポイント低下した。組合員数の減少に連合は危機感を強めている。
もう一つ興味深いデータがある。19年参院選の後、連合が組合員を対象に実施した政治アンケート調査だ。組合員の支持政党は旧立憲と旧国民を足しても34・9%で、「支持政党なし」の36・0%を下回った。半面、13年と16年に10%台だった自民党は20・8%に伸びた。
昨年の衆院選で立憲は議席を減らし、国民は増やした。国民の玉木雄一郎代表は共産との共闘路線と決別し、日本維新の会や、東京都の小池百合子知事が特別顧問を務める地域政党「都民ファーストの会」との連携を探っている。その延長で立憲、国民両党が参院選の「複数区」(改選数2以上)で競合すれば、連合は各地で股裂き状態に陥りかねない。組合員の保守化も進む。こんな状況で支援政党を絞り込むメリットは見当たらない──。これが参院選の基本方針素案の含意ではないか。
連合内部には「このままでは『1人区』で戦えない」と素案に批判的な意見もある。2月17日の中央執行委員会で正式決定するまでには綱引きがあるだろう。ただ、素案から方針ががらりと変わるとは考えにくい。現執行部の否定につながるからだ。
1月5日、東京都内で開かれた連合の新年交歓会に岸田文雄首相が自民党の首相として9年ぶりに出席した。首相は「春闘では労使で真摯(しんし)な交渉を行い、『新しい資本主義』の時代にふさわしい賃上げが実…
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週刊エコノミスト
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