家族主義の日本が生む歪んだ母子。日米を往復する作家が問題提起=寺脇 研
有料記事
映画 親密な他人 母と息子の異常な関係を通し日本の家族主義に問題提起
人の心に不安や猜疑(さいぎ)が入り込みがちなコロナの時代を前提に、人間関係の揺らぎを色濃く感じさせる映画がこれだ。
まず登場するのはオレオレ詐欺の犯行である。「急に入院費用が必要」との電話にコロリとだまされ、祖母は「孫の同僚」を名乗る若者に金を渡す。あっけないほど単純な仕掛けに疑いも持たず引っかかるのは、家族関係の親密さゆえの油断からなのだろう。広く知れ渡っているはずのこの犯罪に、被害が後を絶たないのは、家族主義を基盤とする日本独特の現象ではないか。
そして、金を詐取した若者が次に近づくのは、情報提供に懸賞金を提示までして行方不明の息子を必死で捜すシングルマザーだ。ネットカフェで同宿していた際に預かったままだったという息子の身分証を渡すだけでなく、カレーしか食べない偏食ぶりまで知る彼に、母親は手がかりを期待し始める。
残り845文字(全文1243文字)
週刊エコノミスト
週刊エコノミストオンラインは、月額制の有料会員向けサービスです。
有料会員になると、続きをお読みいただけます。
・1989年からの誌面掲載記事検索
・デジタル紙面で直近2カ月分のバックナンバーが読める