軍事・外交・経済・情報が絡み合う世界の新たな日米安保で求めれる視点=鈴木 洋之
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これからの日米安保 企業活動支援の視点も=鈴木洋之
在ワシントンDCの多くの日本企業関係者は、この1カ月、毎晩、東京から送られてくる質問への対応に苦慮している。「ロシアによるウクライナへの軍事侵攻はあるのか。米国の対露制裁はどうなるのか」というものだ。
軍事侵攻が生じた場合、米国の対露制裁の内容によっては、各社のビジネスにも大きな影響が及ぶ可能性が高い。ただ、日々、外交面・軍事面、更には米議会でも動きや議論があり、情報の鮮度と分析の深度のバランスをどう保つか悩ましい。
米露ウクライナに加え、欧州各国やNATO(北大西洋条約機構)の動き、更には、トルコや中国の反応も絡んでくる中、ワシントンだけの情報にも限界がある。世界各地のインテリジェンス(情報収集・分析)機能を総動員した複眼的な視点がないと問題の本質や想定を見誤まる。幸い、本稿を執筆している2月初旬においては、大規模な軍事侵攻の可能性は低いとの見方が強いが、いつ大きな動きが生じるか予断を許さない。
他方、当地の外交・安全保障関係者や国際政治学者と対話すると、実態は、侵攻するかしないかという単純な構図ではない。既に、サイバー攻撃や、フェイクニュースなどのインテリジェンス戦といった、侵攻の前段階でのさまざまな動きが活発化しているのだ。その先の動きとして、テロや、規模にばらつきはあるものの「侵攻」というカードが常に机の上に置かれている状況という。
先日、バイデン大統領が、ロシアの動きに応じて段階的な対応を検討していることを示唆する旨をコメントし、当事国のゼレンスキー・ウクライナ大統領がそれを批判したやり取りがあったが、実際問題として、米国は、あらゆるロシア側の動きを分析・想定し、対応を準備しているということだろう。いわゆる「グレー…
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週刊エコノミスト
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