ウクライナ問題でかすむが、実は米国の一大問題「インド太平洋戦略」を読み解くと……=吉村 亮太
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具体性欠くインド太平洋戦略 貿易の議論なく“画餅”の懸念=吉村亮太
バイデン政権発足から1年以上を要したが、待望のインド太平洋戦略が2月中旬に発表された。前文、行動計画、結語を含めて18ページ足らずの短い文書だ。
中心的プレーヤーとしてインド太平洋にどっぷり関与し、地域の発展とともに成長することこそ米国の国益と位置づける。2019年11月に前政権がまとめたビジョンをほぼ踏襲した内容だ。協力・連携を重視していることと、中国を非常に強く意識した書きぶりとなっているのが今回の特徴だ。
第1章は「バリュー」(価値)。民主主義・法治主義に基づく国際規範が重要であることを強調。より自由で開かれた地域を目指すとある。
第2章は「域内および域外との協力・連携」について。何度も繰り返し強調されているので検索したところ、同盟国・同盟関係を意味する単語は合わせて34回、パートナーとパートナーシップに至っては76回も使われていた。同盟関係の重視を選挙公約に掲げていたバイデン陣営らしいともいえる。
第3章は「経済成長」。お題目として環境、労働、デジタルエコノミー、5G(第5世代移動通信システム)、サプライチェーン、インフラのようなキーワードが並ぶ。まもなく公表予定のIPEF(インド太平洋経済枠組み)の予告編と思われる。
第4章は「安全保障」。米国の最大の武器である同盟関係を生かした統合的な抑止力発揮を中心に据え、ミサイル防衛、相互運用性の向上などによる域内の安定を目指すとしている。
そして最終章では、「域内で協力して地球温暖化やパンデミックなど地球規模の問題に対するレジリエンスを高める」とある。
通商関係者は失望
通商分野の識者と内容について議論する機会があったが、長年、自由化を推進する立場にあった彼と…
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週刊エコノミスト
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