参院選「1人区」で野党協力できず 求心力失った立憲民主党=中田卓二
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参院選の行方を左右する「1人区」(改選数1、32選挙区)で過去2回成立した野党の選挙協力が崩壊した。立憲民主党は昨年の衆院選の敗北後、共産党との間合いに悩み、国民民主党は与党寄りの姿勢に転じた。「夏の政治決戦」は、このままだと野党の自滅で終わってしまう。
安倍政権下の「自民党1強」に対抗し、主要野党は2016年と19年の参院選で1人区の候補者を一本化した。それでも自民党は16年に21勝11敗、19年に22勝10敗と勝ち越した。改選数2以上の計13選挙区では与野党に議席が分散する傾向があり、1人区の結果は選挙戦全体に大きな意味を持つ。
今回は16年に当選した議員が改選を迎える。そこで、1人区の構図が16年からどう変わったかを、各党の3月1日現在の候補者選考状況を基に分析してみる。
自民党は「1人区が勝負」(茂木敏充幹事長)とみて着々と準備を進め、山形、長野、沖縄を除く29選挙区で擁立のめどがついた。公明党との「相互推薦」問題がこじれたのは不安材料だが、政策の失敗やスキャンダルによる逆風は吹いていない。
離れる国民民主、連合
野党は完全に立ち遅れた。直接の原因は、衆院選で立憲民主党が議席を減らし、「限定的な閣外からの協力」を掲げた共産党を含む野党共闘に疑問符がついたことだ。選挙後、国民民主党は枠組みから離脱し、連合の芳野友子会長も共産批判を繰り返した。立憲で枝野幸男前代表の後を継いだ泉健太代表は連合と共産の双方に気を使い、参院選の方針を決めきれないまま時間だけが過ぎていく。
そんな中、国民民主党は2月下旬、衆院予算委員会と本会議で政府の22年度当初予算案に賛成した。ガソリン税を軽減する「トリガー条項」の凍結解除に岸田文雄首相が国会で前向きな答弁をしたからだという。玉木雄一郎代表は「政策本位で与野党を越えて協力するところは協力していく」と強調した。野党が衆院で当初予算案に賛成したのは15年の旧次世代の党以来。後に同党が自民党に合流したのは何やら暗示的だ。
一方、連合は2月17日の中央執行委員会で決定した参院選の基本方針で、共産党と日本維新の会を念頭に「目的や基本政策が大きく異なる政党等と連携・協力する候補者は推薦しない」と提起した。立憲民主、国民民主両党と連携する余地はかろうじて残したが、支援を明記したわけではない。その夜、芳野氏は自民党の小渕優子組織運動本部長と会食し、臆測を自ら広げることになった。
泉氏と芳野氏は2月25日、東京都内で会談後、そろって記者会見した。1人区の対応について泉氏は「候補者調整がキーワードだ」と説明し、芳野氏は「連合としては基本方針に理解を得たという判断だ」と述べた。共産党が候補者を下ろした形にして、選挙中は表立った応援を控えてもらう──という含意が透ける。
野党にとってさらに深刻なのは、これまで候補者一本化の効果が顕著だった東北の異変…
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週刊エコノミスト
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