教養・歴史アートな時間

複雑で微妙な人間の多面性描くカンヌ国際映画祭グランプリ受賞作=勝田友巳

©2021 Memento Production - Ashghar Production - ARTE France Cinema
©2021 Memento Production - Ashghar Production - ARTE France Cinema

映画 英雄の証明 カンヌのグランプリ受賞作は観客を安心させない複雑多面体

 イランのアスガー・ファルハディ監督は、「別離」(2011年)でも「セールスマン」(16年)でも、人間を複雑な多面体として描いてきた。ごく普通の人々が予期せぬ出来事に巻き込まれて右往左往するうちに、良心と悪意が不連続に現れ、本音と建前がせめぎあい、身勝手にふるまったかと思うと犠牲的精神を発揮する。

 人の真価は逆境でこそ測られるとはマーチン・ルーサー・キングの言葉というが、ファルハディ監督は、登場人物の周りを深く掘り進め、人間はそんなに単純ではないと言い返すかのようである。

残り993文字(全文1267文字)

週刊エコノミスト

週刊エコノミストオンラインは、月額制の有料会員向けサービスです。
有料会員になると、続きをお読みいただけます。

・会員限定の有料記事が読み放題
・1989年からの誌面掲載記事検索
・デジタル紙面で直近2カ月分のバックナンバーが読める

通常価格 月額2,040円(税込)

週刊エコノミスト最新号のご案内

週刊エコノミスト最新号

4月30日・5月7日合併号

崖っぷち中国14 今年は3%成長も。コロナ失政と産業高度化に失敗した習近平■柯隆17 米中スマホ競争 アップル販売24%減 ファーウェイがシェア逆転■高口康太18 習近平体制 「経済司令塔」不在の危うさ 側近は忖度と忠誠合戦に終始■斎藤尚登20 国潮熱 コスメやスマホの国産品販売増 排外主義を強め「 [目次を見る]

デジタル紙面ビューアーで読む

おすすめ情報

編集部からのおすすめ

最新の注目記事