少年の眼から見た故郷の動揺 親密さも当惑も彫りが深まる=芝山幹郎
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映画 ベルファスト 少年の眼から見た故郷の動揺 親密さも当惑も彫りが深まる
ベルファストへは紛争のさなかに陸路で入ったことがある。1980年代末のことで、自動小銃を抱えた英国兵が国境の検問に当たっていた。
いまでも覚えているのは、雑貨屋の前に駐車して、買い物をしたときのことだ。店から出てくると、警官が私の車を覗(のぞ)き込んでいる。「君の車か」と訊くので、そうだと答えると、「停めるときは車内に人を残すように。じゃないと、爆弾の搭載を疑われる」と注意された。ただ、神経を尖らせた記憶はない。無骨だが親切な人々が多かった。
ケネス・ブラナーの自伝的映画「ベルファスト」(2021)を見ながら、そんなことを思い出していた。時代は69年。主人公は9歳の少年バディ(ジュード・ヒル)。バディの家族は両親と兄で、近所に祖父母がいる。
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