ティーン時代から30代へ。血縁の無い家族という「蜜月」を描く=寺脇 研
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映画 蜜月 血縁のない姉と弟が向き合う 苦しすぎる過去と自立への未来=寺脇研
題名の「蜜月」は、ハネムーン=新婚旅行でなく、「蜜月関係」との用法に表れる親密さを意味する。そう、家族の中に潜む親密な男女の関係性をえぐるのが狙いなのである。
別々の家庭で育った高校生の少女と中学生の少年はある日、姉と弟の関係になった。少女の実の父はある事件により母と別れ、少年の実の母は男と出て行った。少女の母と少年の父が結婚して新しい4人家族となったが、どこかぎこちない。こうしたいわゆるステップファミリー(血縁のない家族)が安定した状態に落ち着くには時間が必要と言われるけれど、この一家には何やらそれ以上のわだかまりがありそうだ。
子ども政策を一元的に担う政府の新組織「こども庁」の名称が、いつの間にか「こども家庭庁」となってしまったように、日本ではまだまだ個人の自立より家庭や家族の価値が重視される。コロナ禍の経済対策で子ども一人一人に届くはずだった臨時特別給付金が、世帯単位つまり世帯主対象だったせいで、基準日以降の別居や離婚があると現実の養育者に給付されない問題は記憶に新しい。
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週刊エコノミスト
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