魚の骨がのどに刺さっても、転んで手を痛めてもすぐには受診できない米国の医療事情=峰尾 洋一
有料記事
緊急性と費用で勘案 医療機関に三つの選択肢=峰尾洋一
筆者が米国で生活する上で気を付けていることが二つある。一つは骨をのどに刺さないように、魚は慎重に食べること。もう一つは転ばないようにすることである。こういうことが起きると、日本ではすぐ耳鼻科と整形外科に行く、ということになる。だが、米国ではそう簡単ではない。こうした医師は土日休診である。そして予約がないと絶対に診てくれない。更に場所とタイミング次第だが、すぐに予約が取れないことも往々にしてある。
病院は数カ月待ちも
筆者の妻が耳鼻科の予約を試みたところ、1カ月先と言われたことがある。筆者が転んで手を痛めた時も、5カ所ほどの整形外科に電話をして、いずれも3週間以上空きがないと言われた。
整形外科になると、手・足首・肩・膝と腰、と専門に特化している病院もあり、専門以外は対応しないので、ますます予約が取れない。魚の骨が刺さったまま何週間も待つのは想像するだけでも嫌だが、それを病院の受付に訴えても相手にはされない。彼らの専門は予約を取ることであり、患者の身になって一緒に考えることではないからだ。
急なけがや疾病に対応できるのがエマージェンシー・ルーム(ER)である。ERは週末も開いており、予約不要だ。だがERには別の問題がある。まず、値段が高い。最初に診療の順位を決めるための識別で200~1000ドル(2・3万~11・5万円)、部屋があてがわれると使用料で1000ドル前後、それに診療代が加算される。米国は加入する保険が全医療機関で使えるわけではない。ERが、自分の保険の使えるところであれば自己負担は一部となるが、それでも大変な出費となる。更に、ERの待ち時間は全米平均で2・5時間。ワシントンDCに至っては4・8時間というデータがある…
残り577文字(全文1327文字)
週刊エコノミスト
週刊エコノミストオンラインは、月額制の有料会員向けサービスです。
有料会員になると、続きをお読みいただけます。
・1989年からの誌面掲載記事検索
・デジタル紙面で直近2カ月分のバックナンバーが読める