物価上昇と景気後退の同時進行 英国で高まる悲観論=増谷栄一
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ロシア・ウクライナ戦争の勃発と、西側の対露経済制裁により、英国経済はインフレ圧力が一段と高まり、同時にリセッション(景気後退)リスクが高まるスタグフレーション危機に直面しているという論調が強まってきた。
英国商工会議所(BCC)のエコノミスト、スレン・ティル氏は英紙『ガーディアン』(3月4日付)で、今年の英国内総生産(GDP)成長率は、インフレ高騰や高額増税、ウクライナ戦争の不確実性により半減すると予想。最新の経済予測で、今年のGDP伸び率見通しを前回予測の4・2%増から3・6%増に下方修正した。2021年のGDP伸び率(7・5%増)の半分以下だ。
ティル氏は、「今後数カ月で経済成長は止まる。21年10~12月期のGDPは前期比1%増だったが、22年1~3月期は0・7%増、4~6月期は0・2%増、7~9月期は0・1%増と伸びが停止し、23年は1・3%増、24年は1・2%増と、低成長が続く」と警告する。
英シンクタンクのリゾルーション・ファウンデーションは米経済通信社ブルームバーグ(3月8日)で、戦争による英国の所得縮小に警鐘を鳴らす。「英国の今年の(実質所得ベースでみた)生活水準は1950年代以来、約50年ぶりの大幅低下となる可能性が高い。石油・ガス価格高騰で今春、所得収入が実質で4%、約1000ポンド(約15万5000円)減少する」という。
多くの家計が燃料貧乏
米ゴールドマン・サックスは英紙『フィナンシャル・タイムズ』(3月10日付)で、「英インフレ率は4~10月に9・5%上昇に達する。家計可処分所得が30年ぶり縮小となり、経済成長は止まる」と悲観的だ。米バンク・オブ・アメリカも英紙『ガーディアン』(2月26日付)で、22年の世帯実質所得は前年比3・1%減と、56年のスエ…
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週刊エコノミスト
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