エネルギー禁輸に踏み切れず ロシア依存脱却に高く厚い壁=熊谷徹
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米国のバイデン政権が対ロシア経済制裁措置の一環として同国からの天然ガスなどの輸入を禁止したのに対し、欧州連合(EU)が禁輸を見送った背景には、ロシアに対する高い依存度のために、禁輸が欧州の経済活動に打撃を与えるという懸念がある。
独紙『ヴェルト』は、3月11日付電子版で「EUのフォンデアライエン委員長は、今年末までにロシアからの天然ガス輸入量を3分の2減らし、2027年末までに同国からの天然ガス、石炭、原油の輸入を停止する方針を打ち出した」と報じた。
20年末の時点でEUが輸入した天然ガスの38%、原油の26%、石炭の49%がロシア産。EU加盟国は、ロシアからの天然ガスなどの輸入のために、毎日10億ユーロ(約1350億円)もの代金を支払っている。
ヴェルト紙は、「EUは、今年10月末までに天然ガス貯蔵タンクの充填(じゅうてん)率を最低90%に引き上げるよう加盟国に義務付ける方針」と伝えた。昨年の10~12月期にロシアがEUへの天然ガス供給量を前年比約25%減らしたため、今年3月第1週時点でEUの同充填率は約30%に落ち込んでいる。
EU・ロシア間にはエネルギー紛争の予兆もある。ロシアのノバク副首相は、ドイツがガスパイプライン「ノルド・ストリーム2」建設計画を凍結したことについて、3月7日に「我々はすでに稼働中のノルド・ストリーム1による西欧へのガス供給を止める権利がある」と恫喝(どうかつ)。ロシアが天然ガス輸出停止の可能性を示唆したのは、第二次世界大戦後初めてだ。
これについて独紙『フランクフルター・アルゲマイネ(FAZ)』は3月9日付紙面で、フォンデアライエン委員長の「供給停止をちらつかせる国に、ガス輸入を頼るわけにはいかない」という言葉を引用している。
「返り血」におびえ
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週刊エコノミスト
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