経済外要因の比重が高まる反グローバル化の背景=馬渕治好
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「反グローバル化」の背景変化 人権、環境、安保など要因に=馬渕治好
世界銀行・国際通貨基金(IMF)合同の春季会合が2022年4月18~24日、ワシントンDCで開かれる。秋の年次総会と合わせて年2回、たいていワシントンが会場となる。
そこで思い出したのは02年のこと。同年4月の春季会合に際し、「反グローバル化」のデモがあり、同年9月の年次総会の際には一部が暴徒化し、銀行の窓ガラスが割られるなどの騒ぎが起きた。現地に出張していた私はロナルド・レーガン・ナショナル空港に向かう車中から、破壊された店舗を目の当たりにした。
その頃の反グローバル化運動は、主に経済的な要因によるものだった。労働コストが安い国で企業の生産活動が拡大し、新興諸国の所得水準を引き上げた。同時に、先進諸国の製造業の賃金水準は圧迫され、場合によっては従来型産業そのものが衰退し、労働者の失職も増加。一方、大企業は海外展開で収益を増やし、富裕層は多国籍企業の株式への投資で利益を得たとして、先進国内で経済格差の拡大が注目された。
こうした米国の労働者の不満は、リーマン・ショック後の11年に広がった「ウォール街を占拠せよ(Occupy Wall Street)」運動につながり、フランスの経済学者トマ・ピケティ氏が14年に著した『21世紀の資本(英語版)』のベストセラー化の下地となった。
経済合理性との折り合い
鬱積する労働者の不満に乗じたのがトランプ前大統領だった。中国からの大量の安価な輸入品や中南米からの不法移民が、勤勉な米国労働者の職を奪っていると主張し、対中報復関税や米墨(メキシコ)間の壁建設に着手。さらに、パリ協定や環太平洋パートナーシップ協定(TPP)から離脱し、世界貿易機関(WTO)にも疑義を唱えた。
当時から…
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週刊エコノミスト
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