国際・政治東奔政走

茂木幹事長vs高市政調会長 「もはや子供のけんか」の行方=伊藤智永

2人の関係修復は絶望的?(自民党役員会に臨む高市早苗政調会長〈左〉と茂樹敏充幹事長、4月11日)
2人の関係修復は絶望的?(自民党役員会に臨む高市早苗政調会長〈左〉と茂樹敏充幹事長、4月11日)

 まるで子供のけんかの仲裁だった。3月28日の自民党役員会。居並ぶ党幹部らを前に岸田文雄首相は1枚の紙を読み上げた。「党則には『党が採用する議案は政調会の議を経る』と書いてあります。党内手続きを尊重するようにお願いします」。しかし終了後、茂木敏充幹事長は記者会見で、この首相発言を紹介しなかった。

 事の起こりは高市早苗政調会長が、与党の重要な政策協議からことごとく外されて不満を募らせたことにある。通常国会前半の焦点となった原油価格の高騰対策で、ガソリン税の上乗せ部分の課税を停止する「トリガー条項」の凍結解除問題。解除を求めて2022年度予算案に賛成した国民民主党との実務者協議に高市氏はかませてもらえなかった。さらに、茂木氏が公明党の要求に応えて打ち上げた「新型コロナ対策」名目で年金受給者に1人当たり5000円を給付する参院選対策。そこでも高市氏は蚊帳の外だった。

 怒った高市氏は首相官邸に乗り込み岸田氏に直訴した。「党の政策は政調を通すと党則に書いてあるんですから、守ってもらわないと困ります」。政治家なら自力で押し返すべきところ、学童が先生に言いつけるような行動もいただけない。困った岸田氏はあえて党則を読み上げるパフォーマンスを演じたわけだが、本気で心配するなら茂木氏に個別に注意するだろう。岸田氏のわざとらしい「仲裁」の仕方は、かえって党幹部の間に「総理は参院選後、高市氏を政調会長から外すつもりだな」との観測をかきたてた。

いつも有力者に駆け込む

 幹事長と政調会長は総裁に続く党のナンバー2と3である。もちろんライバル関係でもあり得るが、これほどあけすけに反目し合うのは珍しい。最初にエンジンを吹かしたのは高市氏だった。昨年秋の総裁選で3位ながら、国会議員票は河野太郎元外相を上回る2位と善戦。決選投票の1・3位連合で岸田氏当選に貢献し、後見人の安倍晋三元首相は「高市幹事長にすべきだ」と推した。

 結局2度目の政調会長に納まったが、鼻息は荒く、「ポスト岸田」への再立候補を目指し、存在感を見せつけようと次々に勇ましい発言を繰り出したのだ。公明党が衆院選公約の筆頭に掲げた「高校生以下の子供への一律10万円給付」に「自民党の公約とはまったく違う」と真っ向から反対。衆院予算委員会の筆頭質問者として「佐渡島(さど)の金山」(新潟県)の国連教育科学文化機関(ユネスコ)世界文化遺産推薦を巡り、韓国の反発をはね返して「必ず今年度に推薦すべきだ」と政府に迫り、方針変更させた。

 余勢を駆って12月、首相官邸で岸田氏に北京冬季オリンピックへの外交的ボイコットを迫る。その3日後には茂木氏に、臨時国会で中国人権問題の非難決議を採択するよう談判に及んだ。だが、前外相の茂木氏は元外相の岸田氏と非難決議の見送りで合意済みだった。「今はその時機ではない」といなしたが、高市氏は記者団に「悔しい」とうっ憤をぶ…

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