政治問題化が定着した最高裁判事の承認プロセス=吉村亮太
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最高裁判事に「KBJ」 党派対立で重み増す司法=吉村亮太
4月上旬にケタンジ・ブラウン・ジャクソン氏が米連邦最高裁判事に承認された。バイデン大統領としては、アフリカ系アメリカ人女性を最高裁判事に起用するという選挙公約を果たしたことになる。
バイデン大統領がワシントンDC出身のジャクソン氏を2月末に指名した後、繁華街に同氏のポスターが貼られ、後押しするテレビCMも放送された。頭文字を取って「KBJ」との呼び名で親しまれる彼女はハーバード・ロースクール卒で、公選弁護人の経験もある異色のジュリストだ。今年に入り引退を表明した、リベラル派のスティーブン・ブライヤー判事の席を今夏にも継ぐことになる。
無知をさらすようだが、筆者は日本の最高裁判事の名前は一人として知らない。だが職業柄、米国の最高裁判事であれば大方はフルネームで書ける。一般の米国人にとっても最高裁判事は比較的、身近な存在だ。
実際、ニュースでも名前をよく耳にする。それは、政治的な判断が伴う案件に踏み込まない日本の司法と異なり、米国では選挙のたびに争点となる人工妊娠中絶、性的少数者(LGBTQ)、信教・表現の自由、銃規制、人種など、政治色が色濃く反映される領域の判断を任されているからだ。
前回の大統領選挙の際も、集計結果を不服としたトランプ陣営が選挙管理委員会を相手に再三、訴訟を起こしたことは記憶に新しい。
政治色はらむ承認過程
国を二分する問題であっても、最後は9人の最高裁判事が多数決で決める。大統領任期は最長2期8年だが、米連邦裁の判事は終身制で一度就任すれば影響力は長期に及ぶ。それだけにどのような思想的背景を持つ判事を送り込むかは民主、共和両党の重要な問題だ。現在のように党派対立が激しく、立法が機能不全に陥りやすい時は、…
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週刊エコノミスト
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