NANDフラッシュメモリーの競争激化、キオクシアは増産投資を発表=津村明宏
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3D─NANDの投資活発 100層以上へ多層化競争=津村明宏/61
NAND型フラッシュメモリーは、電源を切っても保存データが消えない不揮発性を持つ半導体メモリーであり、揮発性のDRAM(記憶保持動作が必要な随時書き込み読み出しメモリー)とともにメモリー市場の双璧をなしている。USBメモリーやSDカード、スマートフォンの内蔵メモリーやパソコンの主記憶装置となったソリッドステートドライブ(SSD)などに多用され、搭載用途を大きく広げてきた。
従来はデータを保存するメモリーセルを平面(2D)状に並列して作り込む2D─NANDが一般的だったが、近年はセルを縦に積層して三次元(3D)化する3D─NANDが実用化され、1チップ当たり、面積当たりの記憶容量を拡大させる技術競争が参入各社の競争軸となっている。
台湾の調査会社トレンドフォースによると、2021年のNAND市場は前年比21%増の686億ドルに拡大した。21年前半を中心に、新型コロナウイルス禍で世界的に通信量が増大してデータセンター向けに需要が伸びたことに加え、調達リスクに備えた在庫の積み増し、5G(第5世代移動通信システム)スマホの出荷増なども需要の増加を後押しした(図)。その反動で21年後半から需要が軟化に転じ、22年は緩やかに価格が下落する流れになっていたが、今後は再び需給が引き締まって価格が上昇に転じそうだ。
キオクシアでトラブル
価格上昇のきっかけになりそうなのが、世界シェアの約3割を握るキオクシアで今年1月下旬に発生した生産トラブルだ。四日市工場(三重県)と北上工場(岩手県)で3D─NANDの特定の生産工程に不純物が付着する不具合が発生し、一部操業に影響が出た。
2月下旬に通常操業に回復したものの、合弁パートナーの米ウエスタン・デジタル(WD)の公表によると、このトラブルによる影響は容量換算で約7エクサバイト(エクサは10の18乗)に上り、22年1~3月期の売上高についても従来想定の44・5億~46・5億ドルから42億~44億ドルに減額修正した。業績への影響が大きく出るのは22年4~6月期とみられており、キオクシアとWDの収益は一時的に大きく悪化しそうだ。
だが、このトラブルによる出荷量の減少が、当初の想定よりも早いNANDの価格反転につながりそうだ。トレンドフォースが公表したNANDの価格予測によると、当初…
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週刊エコノミスト
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