英経済に暗雲 迫る景気後退と続くインフレ=増谷栄一
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迫る景気後退、続くインフレ 英経済を覆う暗雲=増谷栄一
国際通貨基金(IMF)が4月18日に発表した最新の世界経済見通しが、英国内でリセッション(景気後退)をめぐる議論に一石を投じた。IMFは、英経済成長は2022年には3・7%増と堅調な伸びとなるものの、23年には1・2%増に急減速し、「G7(先進主要7カ国)中、最下位に落ちる」と警告。インフレ率でも英国は23年が5・3%上昇と、「G7で最大のインフレ国となる」と指摘した。
最大野党・労働党の「影の財務大臣」のリーブス議員は4月18日、英紙『ガーディアン』に対して、「IMFの最新データは政府の経済・社会政策が間違っていることを示す」と述べた。スナク財務相の増税による財政再建を目指した春の予算案(補正予算案)への痛烈な批判だ。同紙のリチャード・パーティングトン記者は、「冬にエネルギー価格が再上昇すれば、政治混乱は必至」と見る。
厳しい経済見通しを受け、政府は財政拡大に転換するかどうかという議論が起き始めている。独金融大手ベレンベルク銀行のシニアエコノミスト、カルム・ピッカリング氏は英紙『デイリー・テレグラフ』のコラム(4月5日付)で、「スナク財務相が思い切った行動を起こさない限り、同相は英国を高税率で弱い投資の国に変えたと記憶される」と言及して、投資拡大の必要性を指摘。その上で、「21年10~12月期の英民間セクターの事業投資に対する税収額は4・1倍に上る。ブラウン財務相当時(同3・9倍)よりも高い」と論じ、課税の行き過ぎが悪化すると警告する。
英予算責任局(OBR)は、政府の最新の5カ年財政計画では、GDP(国内総生産)に占める税負担の割合を1940年代後半以来の高水準に引き上げることになると指摘し、スナク財務相の怒りを買っ…
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週刊エコノミスト
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