国際・政治論壇・論調

独シュルツ首相宛て嘆願書2通にみる分断の深さ=熊谷徹

独がウクライナに対空戦車供与

対ロシア交戦めぐり割れる世論=熊谷徹

 ドイツ政府が内外の圧力に屈して、初めて対空戦車をウクライナに輸出すると4月に発表したが、同国では「ロシアから交戦国と見なされ、第三次世界大戦につながるかもしれない」と批判も出ている。

 独保守系日刊紙『フランクフルター・アルゲマイネ(FAZ)』は4月26日付電子版で「ランブレヒト国防相は、『武器メーカーが中古の対空戦車ゲパルト50両を、ウクライナに輸出することを許可する』と発表した。米国のオースティン国防長官は、この決定を高く評価した」と報じた。

 当初ショルツ首相は「ロシアから交戦国として見られる危険がある」としてウクライナの要請を拒み続けた。首相は4月23日付の独雑誌『シュピーゲル』のインタビューでも「現在のような非常時には、冷静に判断する必要がある。核保有国ロシアとの交戦、第三次世界大戦、核戦争は絶対に避けなくてはならない」と強調していた。

 だがロシア軍が一時占領していたブチャなどで約1000人の市民が虐殺されていたことが明らかになって以来、ウクライナや東欧諸国から、「ドイツは戦車や自走榴弾(りゅうだん)砲などの重火器をウクライナに送るべきだ」という声が高まっていた。

 独日刊紙『ヴェルト』(4月25日付)によると、野党キリスト教民主同盟(CDU)のメルツ党首は「首相が逡巡(しゅんじゅん)しているために、ドイツに対する外国の評価は下がる一方だ」と批判。政権与党・緑の党や自由民主党(FDP)の議員からも「ウクライナは自国だけでなく欧州全体を守るために戦っている。プーチンはウクライナの次はバルト3国などに矛先を向け、第三次世界大戦が起こる」と、首相に決断を迫る声が高まった。

武器支援、増える賛成

 ドイツ第2テレビ(Z…

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週刊エコノミスト

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