経済・企業 FOCUS
大手商社7社が過去最高益なのに来期は6社が減益予想の背景=金山隆一
2022年3月期の大手7商社の決算は資源高を背景に全社が過去最高益を達成した。
7社合計の最終利益は3兆8000億円を超え、その約半分の1兆8000億円は鉄鉱石や石炭、石油、ガス、銅などの資源部門が稼ぎ出した。
しかし、過去最高益を支えた資源高によるインフレや世界景気の後退に直面する懸念があり、今23年3月期は6社が減益を予想している。資源に代わる新しい収益源の育成は各社の共通課題だ。(表の拡大はこちら)
世界的な脱炭素の流れは、ロシアによるウクライナ侵攻でむしろ高まっており、再生可能エネルギーや発電燃料となるアンモニアに三菱商事や三井物産は注力している。
利益率も収益規模も資源に比べ圧倒的に低い脱炭素ビジネスで未来を描けるか、が商社の正念場だ。
商事が首位奪還
21年3月期に4位に転落した三菱商事は石炭の市況高騰などにより、22年3月期の最終利益は9375億円に到達。
2位には鉄鉱石の市況高騰などで三井物産が9147億円となり、トップ2が1兆円に迫った。
21年3月期に首位だった伊藤忠商事は3位に転落したが、利益に占める資源の依存率は27%と最も低かった。
ただし、8202億円の利益は過去最高だが、日伯紙パルプ、後払い決済サービスを運営するペイディの保有株売却など一過性利益も1300億円と過去最高だった。
21年3月期に1531億円の赤字だった住友商事は懸案だったマダガスカルのニッケル事業の操業再開や市況高騰、電力プラント工事遅延による損失の反動などが加わり、4636億円と過去最高益を達成した。
丸紅も21年3月期からほぼ2倍の4243億円で豪州の原料炭や鉄鉱石、原油やガスの市況高騰などが利益を押し上げたが、一過性要因を除く実態純利益4890億円のうち2960億円が非資源ビジネスで占められ、肥料や農業資材、航空・船舶、食料などが好調だった。
原料炭と天然ガスで利益の過半を稼ぐ三菱商事も、自動車、食品、電力、都市開発、素材、化学など全10部門中7部門で過去最高益を達成した。
何を還元?
7商社すべての資源部門の合計利益1・8兆円のうち、市況高騰による増益要因は実に約1兆円。
さらにエネルギーの9割を海外に依存する日本を直撃する円安の増益要因も7社合計で約1000億円あった。今期も1ドル=130円で推移すれば7社の利益は1600億円も上乗せされる。
日本経済を苦しめる円安と資源高に対し、大手商社はどんなソリューションをビジネスとして生み出すことができるか。近年の決算では増配や自社株買いといった株主還元のアピールが恒例だが、「投資のプロ」としての真価が問われる一年となりそうだ。
(金山隆一・編集部)