資源・エネルギー鎌田浩毅の役に立つ地学

多様な環境を生み出した地球内部のすごい温度差

核、マントル、地殻の分化 温度差が多様な環境の源泉に=鎌田浩毅/99

 地球の内部構造は卵を用いて説明することができる。一番表層の岩石でできている「地殻」を卵の殻、その下にある卵の白身にあたるところを「マントル」、中心にある卵の黄身に相当する部分が「核」(コア)である(図)。なお、マントルは、地球の中心にある核をすっぽりと覆う外套(がいとう)(マント)に由来する。

 地殻とマントル、および核の一部は、固体でできている。地殻の下にあるマントルは深さ2900キロメートルまでの大部分を占めており、地球の全体積の約8割に相当する。

 46億年前に“火の玉”状態だった原始地球の表面を覆ったマグマオーシャンは、5億年ほどの年月をかけて徐々に冷えていった。マグマに溶けていた物質の中で、密度の大きい鉄やニッケルは底部へ沈んでいった。逆に密度が小さいマグネシウム、ケイ素、アルミニウム、酸素などの成分は、マグマオーシャンの上方へ昇っていく。さらに密度が小さい水や二酸化炭素などのガス成分は、マグマオーシャンから飛び出していった。

 固結し始めたマグマオーシャンは、次により密度の大きい「マントル」と密度の小さい「地殻」に分離していった。その結果、マントル内部も軽い「上部マントル」とより重い「下部マントル」の2層構造へそれぞれ「分化」していった。ここで重要なポイントは、時間とともに一様に冷えるのではない点である。全体として冷えながらも、早く冷えるところと遅れて冷えるところがあるため、物質と構造の多様性が生まれてきた。

「人間の価値観」排す

 例えば、地球の表面と中心の間にある温度差が、岩石からなるマントルと金属からなる核への分化を促進した。また最上部にある地殻では、その下にあるマントルと核から絶えずやってくる熱を…

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