ベテラン陣相手に若い俳優が健闘して重みのあるドラマに=寺脇 研
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映画 冬薔薇(ふゆそうび)
時代遅れの大人と時季遅れの若者 陽の当たらない不器用な生き方描く
タイトルは「ふゆばら」でなく「ふゆそうび」と読む。私も初めて知ったのだが、「そうび」とは奈良・平安時代に中国から渡来した頃の呼び方だという。しかも、本来は初夏が盛りの薔薇(ばら)が冬? そこにはどうやら、季節外れの意味合いと、最盛期の華美とは対照的に寒風の中ひっそり花ひらく健気(けなげ)さとが込められているようだ。
なるほど、この映画に登場する人物の多くは、季節外れすなわち時代遅れの生き方をしている。横須賀港の片隅でガット船(砂利運搬船)を運航する家族経営のちっぽけな会社が主舞台なのだが、高度経済成長期の日本経済を支えたこの仕事も今ではすっかり斜陽産業だ。老朽化した船をリニューアルすることもできず、だましだまし操る社長兼船長ほか乗組員ときたらほとんど全員高齢者という有り様で、わびしさが漂ってくる。
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週刊エコノミスト
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