国際・政治ワシントンDC

バイデン大統領が学生ローン減免に言及する狙い=峰尾洋一

ホワイトハウス記者協会の夕食会で講演するバイデン大統領 Bloomberg
ホワイトハウス記者協会の夕食会で講演するバイデン大統領 Bloomberg

中間選挙見据えるバイデン大統領

学生ローン返済減免「支持」発言=峰尾洋一

 中間選挙が半年後に迫った4月下旬、バイデン大統領が1人1万ドル(約130万円)を上限に、政府供与の学生ローン(主に大学の学費やその間の生活費支払いのための融資)の返済減免を支持する発言をしたというニュースが流れた。この発言を巡り、ワシントンDCでは賛否両論が飛び交うこととなった。

 学生ローンの返済減免の話が浮上するのは今回が初めてではない。選挙が近づくと、民主党左派を中心に複数の候補が頻繁に言及し、1人5万ドル(約650万円)と、より大きな額が持ち出されることもあった。

 この議論が持ち上がる背景は何か。まずその金額の大きさだ。米国の学生ローン残高は最新データで1兆4000億ドル(約182兆円)に達し、家計債務中では住宅ローンに次ぐ規模となっている。これは、2019年時点の日本学生支援機構の貸与奨学金残高9・6兆円の19倍に値する。推進派は、膨大な残高を一部でも減免することで大きなGDP(国内総生産)を押し上げる効果がある、と主張する。

 また、債務者の数も多い。21年末時点の借入者数は4300万人で総人口の13%に及ぶ。政府が貸手となるこのローンは、与信審査が甘く、簡単に借り入れできる代わりに、自己破産による債務減免が難しい。低所得者には可処分所得に合わせて月の返済を減額する制度がある。柔軟で便利な制度だが、人によっては毎月の返済が利払い額にも満たず、残高が増えてしまう。自己破産ができず、残高も減らない結果、62歳を超えても債務が残る者が250万人に及ぶ。

4300万票取り込みへ

 今回のローン返済減免の話以前に、新型コロナウイルス対策として学生ローン返済を凍結する措置が取られてきた。20年3月導入のこの暫定措…

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週刊エコノミスト

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