教養・歴史アートな時間

不快・不可解なのに目が離せない問題作=勝田友巳

(C) 2020 Lo que algunos sonaron S.A. de C.V., Les Films d’Ici
(C) 2020 Lo que algunos sonaron S.A. de C.V., Les Films d’Ici

映画 ニューオーダー

悪意の連続で観客を突き放す格差社会への冷徹なまなざし

 見ている間から不快で、不可解で、しかも後味まで悪い。それなのに、というか、それゆえに、片時も目を離せない。メキシコのミシェル・フランコ監督の4作目。前作「母という名の女」など、これまでも冷笑的な人間洞察で心の暗がりに潜んだ本音と真実をえぐってきたが、今作では社会の腐敗へと目を転じ、ディストピア(暗黒世界)の生成を描く。観客が試される点では、ミヒャエル・ハネケ監督やヨルゴス・ランティモス監督に一脈通じ、好き嫌いははっきり分かれそう。

 格差社会へのデモが暴動に発展して騒然としているさなか、とある裕福な家の娘、マリアンの結婚パーティーが開かれる。上層階級の招待客が大勢集まっているところへ、元使用人のロランドが訪ねてきて、妻の手術費用を無心する。他の家族から追い返されたことに同情したマリアンは、パーティーを抜け出してロランドの家に向かった。その間、屋敷の庭に暴徒が侵入し、集まった人たちに発砲、使用人たちも加わって略奪と暴行が始まる…

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週刊エコノミスト

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