教養・歴史小川仁志の哲学でスッキリ問題解決

新しいものにすぐ飛びつき、周りから思慮に欠けると非難されます/129

Q 新しいものにすぐ飛びつき、周りから思慮に欠けると非難されます

 新しいものや事柄があると、すぐ飛びついてしまいます。周囲からは思慮深さに欠けるといわれるのですが、改めるべきでしょうか? 自分では、今の時代むしろそういう態度が望ましいようにも思っているのですが。

(営業職・30代男性)

A 真の思慮深さは恥じらいと懸念を一掃した愚者にこそ宿ります

 思慮深さに欠けるというのは、あまり深く考えずに行動に出てしまうことをいうのだと思います。たしかに一見それは愚かな態度であるかのようにも感じますが、相談者のいわれるように、今の時代にはある程度必要なのかもしれません。物事の多様性や、それに伴う価値観の複雑さなどで、いったい何が正解なのかわからない時代ですから。

 とにかく試してみる勇気がいるように思うのです。そこで参考になるのが、ルネサンス期の思想家デジデリウス・エラスムスの『痴愚神礼讃』です。痴愚の女神モーリアが人間の愚かさを皮肉るという体裁の随筆です。

痴愚を使いこなす

 この中でエラスムスは、真の思慮深さは賢人にではなく、愚者にこそ備わっていると論じています。これは皮肉にも聞こえますが、真理を突いています。たとえば、物事を知るうえで大きな妨げとなるものが二つあり、愚者はそれらを一掃することができるというのです。

 その二つとは、恥じらいと懸念です。恥じらいは心眼を曇らせ、懸念は危険が迫ると手を引か…

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