国際・政治ワシントンDC

脱炭素化とエネルギー安保の共存戦略を考える=鈴木洋之

石油・ガス増産と気候変動政策

両立狙うバイデン政権の思惑=鈴木洋之

「エネルギー転換・脱炭素化政策と、経済・外交や安全保障のための米国産エネルギー利用という二つの戦略は相反しない」。最近、バイデン政権の複数の高官が、米国の石油・ガス増産と気候変動政策の両立を狙うメッセージを相次いで発信している。その背景は何か。

 第一に挙げられるのは米国内の政治要因だ。民主・共和両党が拮抗(きっこう)する現在の米議会では、財政支出を伴い、議会承認を必要とする気候変動政策の推進は難しい。少しでも進めたいバイデン政権に焦りがにじむが、他方、米社会で最も関心を集めているのはインフレ対策だ。中でもガソリン価格は物価上昇のシンボルとなっており、共和党は、ガソリン価格高騰にフォーカスを当て、バイデン政権を批判する選挙戦略を強めている。今秋の中間選挙をにらむバイデン政権にとって、ガソリン価格高騰への対応は最優先課題となっている。

 第二に、ロシアのウクライナ侵攻で、米国産天然ガスが欧州のエネルギー安全保障強化のために必須な状況となっている点だ。米国政府と欧州委員会は「エネルギー安全保障タスクフォース」を創設し、エネルギーの脱ロシア化を進めるために、気候目標に沿ったLNG(液化天然ガス)供給の多様化を柱の一つに掲げている。

企業活動の支援が必須

 このように、国内外情勢が相まってバイデン政権は、冒頭の政策転換にかじを切っているといえるが、有力シンクタンクの戦略国際問題研究所(CSIS)は(1)対露制裁強化のための原油増産、(2)欧州のロシア産ガス代替取り組み、(3)クリーンエネルギーの国際展開の三つの支援策からなる米政権への政策提言を発表している。

 提言は、エネルギーの大半を海外に頼る我が国にとっても参考になるものだが…

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週刊エコノミスト

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