四面楚歌のゼロコロナで習指導部に垂れこめる暗雲=河津啓介
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ゼロコロナに固執で経済悪化習主席は批判に「馬耳東風」
「中国のゼロコロナ失敗が世界の最大リスク」。米調査会社による年初の予測が現実味を帯びている。
習近平指導部は新型コロナウイルスの徹底的な封じ込めを図る「ゼロコロナ」政策によって、欧米よりも早く苦境から抜け出したはずだった。
ところが、オミクロン株の流行で、最大の経済都市、上海市が3月末からロックダウン(都市封鎖)状態に陥った。強引な隔離措置に市民から不満の声が噴出。市内では4月の新車販売台数が「ゼロ」となるなど経済活動がほぼ停止した。
中国経済の主要指標は大幅に悪化し、厳しい行動制限は北京を含む他都市に広がる。「5.5%前後」とする今年の経済成長率目標の達成に暗雲が垂れこめている。
内外から方針転換を促す声が高まっており、世界保健機関(WHO)のテドロス事務局長も5月10日の記者会見で「ゼロコロナは持続可能とは思えない」と述べた。
それでも、習指導部は重要会議で「全体的な方針を揺るぎなく堅持し、我が国の政策をわい曲、否定する言動と断固闘争しなければならない」と強調した。医療体制に不安を抱える事情があるとはいえ、ウイルスとの共存に動く他国との相違が際立つ。
なぜそこまでこだわるのか。米紙『ワシントン・ポスト』の記事(電子版5月13日)で、トロント大の中国研究者、リネット・オン准教授は「習国家主席が『感染ゼロ』の達成によって、西側の民主主義国家、特に米国に対する優位性を証明できると信じているからだ」と分析した。
習氏は今年後半に開かれる共産党大会で異例の3期目入りを果たすとみられる。政治的に重要な時期に、看板政策を見直しては威信が傷つくというわけだ。オン氏は「習氏は政策撤回が難しい状況に自らを追い込んだ」とも指摘した。
絶対的な…
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週刊エコノミスト
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